第43回(2017年度)「木村伊兵衛写真賞」の受賞者が発表された。今年は小松浩子と藤岡亜弥の同時受賞。
本賞は故・木村伊兵衛の業績を記念して1975年に創設されたもの。各年にすぐれた作品を発表した新人写真家を対象としていることから「日本写真界の芥川賞」とも呼ばれている。選考にあたっては写真関係者からアンケートによって候補者を推薦後、選考委員会で受賞者を決定するもので、選考委員は、石内都、鈴木理策、ホンマタカシの写真家3名と、作家の平野啓一郎氏の4名。
今回選ばれた小松浩子は1969年、神奈川県生まれ。2009年の初個展以降、国内外で個展、グループ展を多数行っている。15年、ドイツのThe 6th Fotofestivalで発表された作品がイタリアのMAST財団に収蔵。17年、DIC川村記念美術館で行われた『鏡と穴-彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子』が、「Artforum」のアーティストが選ぶベスト写真展(原美樹子選)に選出された。
今回の受賞対象作品は、ギャラリーαMで行われた展示「人格的自律処理」と、イタリア・ボローニャで行われた展示「The Wall, from 生体衛生保全, 2015」のふたつ。
いっぽう藤岡亜弥は1972年、広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。2008年新進芸術家海外研修員(文化庁) としてニューヨークに滞在し、12年に帰国。現在は広島を中心に活動している。写真集に『さよならを教えて』(2004、ビジュアルアーツ)、『私は眠らない』(2009、赤々舎)、『川はゆく』(2017)など。第24回写真「ひとつぼ展」(2005)入選、日本写真協会賞新人賞(2010)、伊奈信男賞(2016)と受賞歴多数。サンフランシスコ現代美術館に作品が収蔵されている。
受賞対象作品は写真集『川はゆく』(赤々舎)とガーディアン・ガーデンでの展示「アヤ子、形而上学的研究」。
今回の選考に当たり、アサヒカメラ編集長の佐々木広人は「今年はノミネートされた写真家6人が全員女性だったため、驚きの声が上がりました」というが、「そこに驚きを感じてほしくないと思います」と語っている。
「むしろ、注目していただいきたいのは、昨今の写真家の作品展示・発表のありようです。木村伊兵衛写真賞の受賞対象者は『その年に優れた成果を出した新人写真家』。かつては写真集、写真展、雑誌で写真そのものを国内でストレートに発表するスタイルが多かったと思います。ところが、今や写真を使ったインスタレーションは当たり前、展示は簡単に国境を超え、インターネット使った「電脳世界」でも繰り広げられるようになりました。選ぶ側はもちろん、「写真の現在」を伝えるメディアは、それまでの経験則に頼ることも、立ち止まることも許されない時代になったわけです」
なお、受賞作品展は4月24日〜5月7日に、東京・新宿のニコンプラザ新宿 THE GALLERY 1で、6月14日〜20日にニコンプラザ大阪 THE GALLERYで開催される。