EXHIBITIONS

宮島達男「Uncertain」

2020.11.07 - 12.12

宮島達男 Painting of Change(一部) 2020 協力=SCAI THE BATHHOUSE 写真=表恒匡

宮島達男 Painting of Change 2020 協力=SCAI THE BATHHOUSE 写真=表恒匡

宮島達男 Unstable Time 2020 協力=SCAI THE BATHHOUSE 写真=表恒匡

宮島達男 Changing Time with Changing Self -small circle no.12 2020 ※SCAI PARKでの展示作品

宮島達男 Changing Time with Changing Self -small circle no.12 2020 ※SCAI PARKでの展示作品

 1と9のあいだを行き来するLED(発光ダイオード)の明滅によって、生死とその周囲との複雑な関係性を表現してきた宮島達男。その新作展がSCAI THE BATHHOUSEで開催される。

 宮島は1957年東京都生まれ。86年東京藝術大学大学院修了。88年にヴェネチア・ビエンナーレ新人部門に招待され、デジタル数字を用いた作品で国際的に注目を集めて以来、国内外で数多くの展覧会やパブリック・アートを展開してきた。本展「Uncertain」では、生命の流動性・予測不可能性そのものを取り入れた近年の作品群の新たな展開を見せる。

 宮島にとって初めてとなる絵画シリーズ「Painting of Change」は、「1〜9」までのデジタル数字が、7つに分割されたセグメントで壁面に表現される作品。大小様々な5つのシリーズが並んだ展示室内には、特製の多面体サイコロがひとつ置かれ、あらかじめ決められた周期に従ってサイコロが振られる。出た目に応じてセグメントを引く、あるい戻し、壁面の数字を変化させていく。使用されないセグメントは床に整然と置かれ、何も刻印されていない「0」の目では、すベてのセグメントが床に落ちる。

 色の濃淡や色相の違いによって、「8」の状態では、ほかすべての数字の可能性を示唆するように見える「Painting of Change」シリーズは、仏教の思想家・鈴木大拙に強い影響を受け、東洋の占術「易」を通じて画期的な作曲方法へとたどり着いたジョン・ケージの『Music of Changes』に対して、直接的に言及する作品となっている。
 
 ヴェルナー・ハイゼンベルクの不確定性原理を彷彿とさせる本題「Uncertain」は、量子力学に影響を受けながら、「物事を真に予測することなど人間には不可能であり、またその展開は常に偶然性に委ねられている」と考える宮島の世界観を端的に表したもの。また、ジョン・ケージが東洋思想に強い影響を受けたのと同じ頃、カリフォルニアで量子力学のブレイクスルーが起こっていることも、宮島の関心を喚起したと言う。

 このほか、会期中に様々に姿を変える作品《Unstable Time》を展開。本展は、現代社会への眼差しとその批評的態度によって、自身の芸術表現を切り拓いてきた宮島の新たな新境地の表明になるとともに、予測不可能な時代を生きる私たちにとっても大きな示唆に富むような展示となる。

 なお本展と同時に、輪廻転生と命の多様性を7色のLEDに託した新作《飛天》を展覧する個展が、SCAI PARKで開催される。