EXHIBITIONS

淺井裕介「ピュシスとピュシス - テープと旅のドローイング」

2020.10.22 - 2021.01.24

淺井裕介 あの人は火山になりたいと言った 2020 ©︎ Yusuke Asai Courtesy of ANOMALY

 淺井裕介の新作個展「ピュシスとピュシス―テープと旅のドローイング」がNADiff Galleryで開催される。

 淺井は1981年東京都生まれ。アトリエでの制作と並行して、2003年よりマスキングテープに耐水性マーカーで植物を描く「マスキングプラント」の制作を開始する。また、滞在制作する各々の場所で採取された土と水を使用し、動物や植物を描く「泥絵」、アスファルトの道路で使用される白線素材のシートから動植物のかたちを切り出し、バーナーで焼きつけて制作する「植物になった白線」などの作品も展開。屋外の大規模なプロジェクトでは、友人やボランティアなど第三者との共同作業を交えながら制作を行っている。

 近年では、10メートルを超える泥絵の大作を立て続けに発表。淺井の描く動植物たちは多くの場合、画面に隙間なく併置され、また大きな動物のなかに入れ子状に小さな動物が表され、ミクロのなかにマクロが存在する宇宙の生態系を思わせる。

 本展タイトルになっている、ギリシア語で「自然」を意味する言葉「φύσις(ピュシス)」は、古代ギリシアの哲学者たちによって世界の根源とされ、絶対的な存在とされていた。そして「ピュシス」には、「誕生」「成長」「生成」といった意味もあり、生まれ、生成、発展する可能性をつねにもっている生命ある有機的な存在としてとらえられ、人間は「ピュシス」の一部に包み込まれているとも考えられていた。

 近年、淺井は中国の重慶、上海、北アイルランドや石巻、猪苗代などの各地での制作過程で、「野生」や「自然」について多くを学び、思考を深めてきたと言う。その過程でふれた「ピュシス」としての自然に大いに関心を寄せた淺井が、本展では「マスキングプラント」による新作を室内で発表する(会期中には一部展示替えあり)。