EXHIBITIONS

New Photographic Objects

写真と映像の物質性

2020.06.02 - 09.06

Nerhol Portrait of Mr. Yoshida 2017 Courtesy of YKG / Yutaka Kikutake Gallery

迫鉄平 2014年のドローイングブック 2018

滝沢広「AVALANCHE/SHEET/DUAL」(rin art association、群馬、2017)での展示風景 © Hiroshi Takizawa Courtesy of rin art association

牧野貴 Still in Cosmos II(部分) 2016 © Takashi Makino

横田大輔 「Room.Pt.1」(ガーディアン・ガーデン、東京、2019)での展示風景

 デジタル技術が加速度的に発展し社会に浸透した現代において、写真や映像による表現は、動画像編集ソフトによる加工や合成、コピーやスキャニング、ソーシャルメディアやフォトシェアリング・プラットフォームを利用した双方向的な手法などによって拡張を見せている。

 こうした状況を踏まえつつ、本展では、メディアの物質性を重視した独自のアプローチで、新機軸を打ち出す4人と1組のアーティスト、迫鉄平、滝沢広、Nerhol(田中義久、飯田竜太)、牧野貴、横田大輔を紹介する。
 
 スナップ写真の技法を応用した映像作品や、複数の瞬間を1枚の写真に畳み込むスナップ写真のシリーズにおいて、「決定的瞬間」から被写体と鑑賞者を解放することを試みる迫、経年変化した石や岩などを被写体に、その原料属性から離れた重厚で物質的なイメージを写真で創出する滝沢、ある条件下で撮影した数百枚の写真を積層し、彫り込む手法を用いるNerhol。

 牧野は、自然現象や風景など既存の事物をフィルムやヴィデオなどのフォーマットで撮影し、編集段階で様々な操作を取り入れた映像作品を手がけ、横田は、撮影後のデータ加工、出力や複写の反復、特殊な現像方法などを複雑に駆使した写真で、記憶と現在、イメージと現実の関係性を問う制作を行っている。

 本展の狙いは、5組の作品をラディカルな再考と更新を目指す「新しい写真的なオブジェクト」と仮定し、著しい速度で変化する現代の写真・映像表現の一断面をとらえること。5組の多様な取り組みは、私たちを取り巻く今日の視覚環境について、深く考えを巡らせるきっかけとなるだろう。

※埼玉県立近代美術館は6月2日より再開し、本展の会期を6月2日〜9月6日に変更して開催(当初の会期は4月4日~5月17日)。来館にあたっての注意は公式ウェブサイトにて案内。