EXHIBITIONS

ミン・ウォン「偽娘恥辱㊙部屋」

2019.11.30 - 12.29

ミン・ウォン 偽娘恥辱秘︎部屋 2019 映像スチルより

 ヴィデオやインスタレーション、パフォーマンスの手法を用いて、ワールドシネマと大衆文化を語り直すアーティスト、ミン・ウォンの個展が開催される。

 ミンは1971年シンガポール生まれ。自らも俳優となって不完全に翻訳された物語を再演することで、「真正性」「オリジナリティ」「他者」という概念を解きほぐし、ジェンダー意識がいかに構築、再生産され、表象のポリティクスに流れ込んでいくのかを考察してきた。近年のプロジェクトではパフォーマンスとインスタレーションを融合させ、世界の文化的産物への探究を深化させている。

 これまで、活動拠点とするベルリンをはじめ、中国、日本、アメリカなどで個展を開催。2009年には第53回ヴェネチア・ビエンナーレのシンガポール館代表に選出され、個展「ライフ・オブ・イミテーション」で審査員特別表彰を受賞した。

 本展では、1971〜88年まで全国上映された成人男性向けの映画シリーズ「日活ロマンポルノ」を題材とし、謎多き女、勝気なストリッパー、SMの女王を演じた3人の女優を「再演」した《偽娘恥辱秘部屋》を公開。ウォン自らが「偽娘(にせむすめ、中国語で女性的な容姿を持つ男性のこと)」になりすまして作中に介入することで、ポルノ映画の男性中心の視線を逸脱する本作は、映画史が加担した性的ヘゲモニーをクイア化することを企図しているという。

 作品撮影は、オンラインで購入した最低限の機材と一台のiPhoneのみを使用。会場では、数十台のスマートフォンに女性たちの「秘め事」を映し、公共空間とオンラインメディアというプライベート空間を交差させ、鑑賞者に70年代と現代を行き来するような体験をもたらす。

 また、本展カタログとして、ミン・ウォンがポルノ女優を演じる2020年月めくりカレンダー『色暦偽娘恥辱㊙部屋』が作成され、会場にて販売される。