横山奈美「LOVEと私のメモリーズ」

　通常見向きされないものに焦点を当てた静物画や、ネオンを絵画に描いたシリーズを発表してきた横山奈美。捨てられる寸前の身の回りの物や、ネオン管の裏側で見えないよう隠される器具や配線といった、主役にはならないものに光を当てることで、そのものが持つ役割の枠を取り払い、すべてのものに備わる根源的な美しさと存在意義を表現している。

　本展では、横山のデザインによるネオン管をモチーフとした、ネオンシリーズの新作を展示。また、ビキニ姿の女と男や、LOVEの文字のネオンをモチーフにした大作、少女とラブという名の犬の思い出の場面が描き出された木炭のシリーズ、油彩や木炭によるドローイングなど、新作が並ぶ。個展のタイトル「LOVEと私のメモリーズ」のLOVEは、広い意味での愛と犬のラブを指している。

　「長い美術の歴史の中で多く題材として扱われてきたLOVE という単語に興味を持ちました。西洋美術史におけるLOVE、それはキリスト教と密接に結びつき、とても壮大な意味を持つ単語です。しかし同時に日本人である私たちの日常に溢れかえり、生み出されては消費され続ける、儚くも軽薄な側面を持ちます。私たちはこの西洋から輸入された単語の意味を本質的に理解出来ているのでしょうか。 私の人生で見たLOVEにまつわる風景を思い出しながら、その本質を探すための絵を描きました（横山奈美）」