EXHIBITIONS

ローマの景観

—そのイメージとメディアの変遷

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ コロセウム(『ローマの景観』より) 1761 国立西洋美術館蔵

 古代からの歴史が幾層にも集積し、今昔の人々が憧憬を抱く街・ローマ。しかし、ローマに関する確かな視覚イメージが広まるのは、三十年戦争などの戦乱が落ち着き、私的な旅行が増える17世紀以降のことだ。

 ヴェネツィア生まれの建築家・画家ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージが、1746年から47年頃に手がけた版画連作《ローマの景観》は、主にイギリスの貴族の子弟たちとその家庭教師として同行した文化人の、ローマでの見聞を故郷に持ち帰りたいという願望に応えた。本作では、コロセウムに代表される古代遺跡やその後の時代の記念碑的建造物が壮麗に描かれるいっぽう、当時の人々やその風俗を挿入し、理想と現実が渾然一体となったローマの景観を表している。

 本展は、国立西洋美術館が所蔵する油彩画・版画・工芸作品17点に、東京都写真美術館所蔵の写真作品18点を加えた、合計35点で構成。ピラネージの《ローマの景観》を手がかりに、17世紀以降から今日にいたるまで、ローマのイメージがどのように変遷し引き継がれたのか、その事例を紹介する。