「王の画家にして画家の王」。そんな異名を持つ17世紀ヨーロッパを代表する画家、ペーテル・パウル・ルーベンスがこの秋、東京にやってくる。
「ルーベンス展―バロックの誕生」と題された本展は、これまで通常、フランドル美術のなかに位置づけられてきたルーベンスを、イタリアとのかかわりに焦点を当てて紹介するもの。ルーベンスの作品を、古代彫刻や先行する16世紀のイタリアの芸術家の作品、そして同時代以降のイタリア・バロックの芸術家たちの作品とともに展示。ルーベンスがイタリアから何を学んだのかを紹介するとともに、ルーベンスとイタリア・バロック美術との関係を解きほぐし、明らかにすることを目指すという。
これまでも日本では各所でいくつかの「ルーベンス展」が開催されてきたが、ルーベンスとイタリアとの双方向の影響関係に焦点を当てた展覧会は今回が初となる。監修を務めるのは、イタリアのバルベリーニ宮国立古典美術館で長年にわたり館長を務めた経験を持つ17〜18世紀イタリア美術のスペシャリスト、アンナ・ロ・ビアンコと国立西洋美術館で「ラファエロ展」「アルチンボルド展」などを担当してきた渡辺晋輔。
展示は「ルーベンスによる古代美術とイタリア美術の学習」「英雄としての聖人たち:宗教画とバロック」「ルーベンスを囲む人々:情愛の表現」「ルーベンスの筆さばき:速筆が画面にもたらす活力」「ヘラクレスと男性ヌード」「ヴィーナスと女性ヌード」「神話主題に見られるルーベンスの学識」の全7章で構成。《エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち》(1615-16)をはじめ、《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》(1615-16)、《パエトンの墜落》(1604-05)、《ローマの慈愛(キモンとペロー)》(1610-12)などがリヒテンシュタイン侯爵家コレクション、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、エルミタージュ美術館などから来日。展示点数は近年では最大規模となる予定だ。