Victor Takeru「EXIT MELODIE」

　OIL by 美術手帖ギャラリーで、Victor Takeru（ビクター・タケル）による個展「EXIT MELODIE」が開催されている。

　Victor Takeru（ビクター・タケル）は1998年生まれ。フランス人と日本人の両親のもとパリで育ち、グラフィックデザインを学んだあと、21歳で東京へ移住。現在も東京を拠点に活動している。

　本展では、ビクターの創作活動においての「最初の章」として、彼が「Ambient Music Painting（アンビエント・ミュージック・ペインティング）」と呼ぶ新たなテーマの作品を発表。

「Ambient Music Painting」とは、自身のアートを的確に表現する方法を模索するなかで生まれた、作家による造語だ。幼少期から暮らしたパリの家で流れていたというアンビエント・ミュージック＝環境音楽をインスピレーション源にしたこの言葉は、ビクター自身が絵を描くときの指針になるだけでなく、アンビエント・ミュージックと同様に、観者へ自然に浸透し、対象について深く自由に考えを巡らせることのできる絵という意味が込められている。

　また、ビクターの絵では監視カメラ（VHSカメラ）に見られる灰色がかった色調も意識されている。ビクターの絵画には自画像が多く登場するが、画家の目は覆われ、その視線は決して見ることができない。人の目が隠れているいっぽうで、無機物のカメラの視点のみが躍動している世界観は、ビクターの作品において重要な役割を果たす「逃避」というテーマを想起させる。