EXHIBITIONS

西川茂「矛と盾」

2024.11.30 - 12.17

西川茂 Gap-Sealed House 18- 2024 油彩、アクリル、紅白幕、黒白幕、ステンレス、パネル 907 × 968 mm

 京都 蔦屋書店で、西川茂による個展「矛と盾」が開催されている。

 西川の作品は、建築中あるいは解体中のシートに覆われた建造物をおもなモチーフにしている。周囲の風景を白紙に戻すように塗りつぶしたり、色面で覆ったりと変化を重ね、周辺の環境を色として取り込みながら、建造物を覆うシートを大胆な筆致と絵の具の物質感をもって描いている。

 日常に突如現れるシートに覆われた建物や空間は、それ以前の土地の記憶を簡単に消し去り、新たな風景を当たり前のように感じさせる。同時に、当たり前の日常が曖昧な記憶の積み重ねであり、すべてのものが永続的ではなくつねに変化の流れのなかにあることを気付かせる。自然豊かな地域で生まれ育った西川にとって、変化し拡大を続ける都市の姿は、制御しがたい自然の力と人との付きあい方やせめぎあいを描くうえでの象徴的な題材である。創造と解体は、生と死でもあり、シートに覆われた建造物を描くことで、万物の流転を表現しようとしている。

 本展では、変化し続ける世界の中で、西川が感じた心の内の矛盾を留めた新作絵画14点を発表。京都の歴史的建築から田園風景に紛れ込むメガソーラーの姿、また古いポストカードを用いた小品など、変わりゆく世界に対峙する西川の視点を感じる展示となる。