EXHIBITIONS

福永大介「醗酵される時間」

Rising 2024 oil on canvas 194.0 × 130.3 cm ©︎Daisuke Fukunaga

 小山登美夫ギャラリー 六本木で、福永大介による個展「醗酵される時間」が開催されている。

 福永大介は1981年東京都生まれ。2004年多摩美術大学美術学部絵画科油絵専攻卒業。2009年第1回絹谷幸二賞を受賞。現在は東京を拠点に制作活動を行い、とくに近年は、2022年Nonaka-Hill(ロサンゼルス)、Antenna Space(上海)、High Art(パリ)と海外での個展を開催、国内外で精力的に活躍を続けている。

 福永は制作初期より、路地裏、バックヤードなどに惹かれ、モップ、タイヤ、バイクシートなど忘れられがちなものへの独特な存在性を見出してきた。それらが生き生きと見えたときの自らの感覚をドキュメントするように描き、静かに佇むそのものたちは凛々しく崇高な姿を表している。

 そして、2020年に同廊での個展で、「はたらきびと」が休憩している様を描いた作品を発表し、好評を得ている。労働者の社会的な姿と、休憩中リラックスして個性が現れる様子のコントラスト。耽美的で気品があり物憂げな表情やポーズは、不思議な多幸感と暗さに満ちている。独特な画面のゆらぎと、青、緑、紫、ピンク、オレンジなどの淡く鮮やかな色彩、無国籍な背景が画面に虚構性をもたらし、濃密で独創的な世界観を展開。

 本展の新作ペインティングは、2020年の個展につづく、はたらく人物を主題とした作品となっており、その世界観はさらに醸成していく。そこには、時がもたらす変化を作家自身の姿にも重ね、はたらきびとが労働から解放、分解されて、何かが生成されるような「醗酵される時間」や様子が描かれている。福永の絵画における挑戦は、労働というテーマから現代の日本においてどのように人物を描くかという大きな可能性を広げている。会場では、年齢が上がることでの感覚の変化が、人と花の盛りを過ぎてもなお輝き続ける人生観とも重なっていく福永の新作が並ぶ。