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外国人労働者への讃歌。マリア・ファーラ「Overseas」展がオオタファインアーツで開催中

フィリピン人の母とイギリス人の父とのあいだに生まれ、現在はロンドンを拠点に活動しているペインター、マリア・ファーラ。その新作個展「Overseas」が東京・六本木のオオタファインアーツで開催されている。会期は2022年2月5日まで。

展示風景より

 1988年にフィリピンで生まれ、現在はロンドンを拠点に活動しているアーティスト、マリア・ファーラ。その日本では2回目の個展となる「Overseas」が、東京・六本木のオオタファインアーツで開催されている。

 フィリピン人の母とイギリス人の父を持ち、2歳から15歳までを日本で過ごしたファーラ。そんな独特な経験から、本展では自身の母に代表される外国人労働者や移民に焦点を当てた約20点の新作ペインティングを展示している。

展示風景より
展示風景より、《鳥にえさをあげる女》(2021)

 ファーラはステートメントで本展について次のように述べている。「海外労働者の声の多くは耳に入ってこない。彼らは芸術家でも政治家でもなく、家族を養うために黙々と仕事をこなしているのだ。彼らはこの世界において目に見えない静かな存在だが、彼らがいなければ社会は機能しない。色が、彼らの声を表すメタファーになればと思う」。

 ベーカリーや楽器店のショーウィンドウを覗き込む女性たちの後ろ姿をしばしば描いてきたファーラは、新作において海の向こうや、サーブするテーブルのほうに顔を向けている女性の労働者たちの後ろ姿を描いた。主人公の人種は様々で、日本やイギリスで「外国人労働者」として働いてきた母を見守る自身の複雑な気持ちが込められている。

展示風景より、左は《テラスのある部屋》(2021)
展示風景より、《小さな子羊さん、だれがきみをつくったの》(2021)

 例えば《テラスのある部屋》は、広いテラスの床を磨く途中、客人の落としたピアスに気づいた客室係の姿が描かれた作品。雄大な海を眺め、望郷に嘆息する時間がないほど毎日忙しく働く海外労働者の実態をもっとも直接的に表したものだ。

 《絶望の中にいる女》は、自分の子供とは海を隔てていながら他人の子の世話をする女性の孤独感を、彩度を抑えた画面で表現した作品。海外で働くために家族が離散するという現実を突きつける。

展示風景より、《絶望の中にいる女》(2021)
展示風景より

 今回の展示作品についてギャラリーオーナーの大田秀則は、「彼女がいる白人社会のなかで、ほかの地域から来ている人がきちんと社会の一員になり、社会を支える外国人労働者に対するリスペクトや逞しさ、ディグニティーを表している」と語っている。

編集部

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