EXHIBITIONS

阿波根昌鴻 写真展「人間の住んでいる島」

写大ギャラリー
2024.11.05 - 2025.01.31

阿波根昌鴻 子供たち 1955

 写大ギャラリーで、阿波根昌鴻による写真展「人間の住んでいる島」が開催されている。

 阿波根昌鴻(1901〜2002)は、沖縄・伊江島で米軍に対して非暴力の土地闘争を展開した人物として知られている。沖縄戦から10年後の1955年、伊江島では基地拡大を目的とした米軍により、阿波根らの住む真謝区の住民らは住む場所と農地を奪われ、餓死者を出すに至った。「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強制的な土地接収とその後も続いた横暴に対峙するために、阿波根は一台の二眼レフカメラで日々の出来事を記録し始め、カメラによる記録を抵抗の手段とした。

 阿波根らは島でたった一台しかなかったそのカメラを代わる代わる使い、軍事演習が引き起こす被害や米兵による暴力、「乞食行進」と呼ばれる行脚の様子などを記録し、米占領下で不可視化されていた離島の出来事を可視化。やがて支援の輪は、沖縄島だけでなく沖縄と切り離されていた本土にも広がっていく。

 阿波根の著書には、『米軍と農民』(1973)や『命こそ宝 沖縄反戦の心』(1992)、唯一の写真集『人間の住んでいる島』(1983)などがあり、カメラとペンによる詳細な記録が残されている。2002年に亡くなるまで平和の大切さを訴え続けた阿波根は、いつしか「沖縄のガンジー」と呼ばれるようになった。

 東京工芸大学では、『人間の住んでいる島』の編集を手がけた張ヶ谷弘司のもとで保存されていたプリントを収蔵すると同時に、残されたモノクロネガフィルム約3600枚をデジタル化し、新たに銀塩プリントを制作。ネガのなかには、伊江島の日常のスナップや住民たちのポートレイトが数多く含まれており、阿波根が守りたかったものが何だったのかが垣間見えてくる。