EXHIBITIONS

多声性のトーチ Polyphonic Torches

青木きらら(谷澤紗和子+藤野可織)、香川裕樹、正垣雅子、東畠孝子、八幡亜樹

2024.10.26 - 2025.05.11

メインヴィジュアル

 BnA Alter Museum 階段型ギャラリーSCGで、青木きらら(谷澤紗和子+藤野可織)、香川裕樹、正垣雅子、東畠孝子、八幡亜樹による展覧会「多声性のトーチ」が開催されている。

 多声性とは、複数の独立した声部が同時に響きあうことをいう音楽用語であると同時に、自律した声とそれらが織りなす還元不可能な対話の様態のことを言う。またここでは、コトバであり声としての「多声性のトーチ」を発音・発話することによって意味を得る・変容していく多義的な広がり、無数のズレ、決定不可能性とを意味している。

「多声性のトーチ」とは多声性が指し示す、照らし出す場、多声性による統治(民主主義を含む統治形態)、そしてほかへと生成されるトーチそのもの、あるいは喪へと移ろいゆく容態をも指し示している。この様態が持つディアスポラ的特性へのトーチそして統治、これは今日におけるトーチなき絶望的な情勢、不可能とも思える統治に対する実践と制作(発話と対話)でもあるとしている。

 本展では、国内外の文化的ネットワーク上で宗教美術・文化財伝世としての模写・手技が持つ感覚を追体験する正垣雅子、大量生産品によるモニュメンタルな対称的全体のなかに隠匿された非対称的部分を体系的に可視化する香川裕樹、切り紙や言葉によって現在という歴史のなかで抑圧する/される主体たちの匿名的な現れと対話をする青木きらら、視線とその先にある媒介物としてのモノを通していまここの時間と記憶に転換を促す東畠孝子、地理的・社会的・心身的な辺境を通じて外部化された生存権を自己へと回帰させ拡張を試みる八幡亜樹、以上5組のアーティストによるインスタレーション作品が展開される。

 加えて、本展ではそれぞれのアーティストが自作について語る音声ガイドも付属。この音声ガイドには、本展オリジナルサウンドトラックとして音楽プロデューサーで映像作家のseaketaによる、エコーや残響を特徴とするダブアンビエントを再解釈し制作された楽曲を収録。外の喧騒と作家の語り、この楽曲たちが響きあい展覧会を多声的に演出する。

 登りながら鑑賞するという特殊な空間体験を伴う階段型ギャラリーにて、垂直に伸びる対話の積層とそれらが照らし出す場を体験してみてほしい。