EXHIBITIONS

青山悟展「永遠なんてあるのでしょうか」

2018年 東京の夕暮れ 2024 ポリエステルに刺繍(ポリエステル糸) ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

 ミヅマアートギャラリーで、青山悟による個展「永遠なんてあるのでしょうか」が開催されている。

 青山悟はシンガー社製の古い工業用ミシンを用いながら、現代社会における労働や資本主義の問題を示唆する作品を制作してきた。

「創造を途絶えさせないことによってのみ、アートは時代を映す鏡たりえる」と語る青山は、この数年、新型コロナウイルスのパンデミックや世界各地で起こる戦争や紛争、またそれらが引き起こす分断などの社会問題に対し、批評性とユーモアを交えながら刺繍でつねに表現し続けている。

 今年4月に目黒区美術館で開催された、初の公立美術館での個展「刺繍少年フォーエバー」では、20年にわたる作家活動を総括した内容に加え、ほぼ毎日行われた公開制作のライブ感と変化し続ける展示空間が多くの観客を惹きつけた。

「刺繍少年フォーエバー」に続き開催される本展では、青山が近年取り組み続ける、急速にグローバル化する社会のなかで埋もれていく「見えざるもの、消えゆくもの」を主題とした新作を展示。

 映像作品《The Cashiers》では、コンピューターミシンを用い「近所で起こった、どこにでも起こりうる出来事」に焦点をあてながら、これからの機械と人間の関係性と失われていく職業について考察を促す。

 初期の風景作品を彷彿させる新作《2018年 東京の夕暮れ》では、パンデミック前に撮った写真をもとに、変わらないようでいまはもうない日常の風景を全面刺繍で描いている。忘れゆく記憶と流れゆく記録をテーマにした本作について、今後ライフワークとして定期的に制作していくシリーズの第一作目と青山は語っている。

 また、今回は、目黒区美術館でも発表した子供たちとの共同制作によるパッチワーク作品《常識モンスターをやっつけろ!》や、そこから派生した自身初となるソフト・スカルプチャー作品など多様な表現も展開。

 本展のタイトル「永遠なんてあるのでしょうか」は、「刺繍少年フォーエバー」の副題として付けられたもので、青山が「消えゆくものたちの小さなモニュメント」と呼ぶ、雑誌や紙幣、チラシを刺繍で再現した作品には、あらゆる情報やものが「刹那的」に消費され、急激に変容していく現代社会への問いが込められている。