EXHIBITIONS

島田由子「墨から墨まで」

フジギャラリー新宿
2024.09.07 - 09.29

島田由子 墨no.004(Sumi No.004) パネル、墨、箔、膠、越前鳥の子襖紙
panel, Sumi, metal leaf, hide glue, Echizen Torinoko fusuma paper 723 × 530 mm

 フジギャラリー新宿で、島田由子による個展「墨から墨まで」が開催されている。

 島田由子は襖絵師。金沢美術工芸大学で日本画を専攻し、その後、デザイン会社や劇団の美術部などでの勤務を経て、現在は襖絵を中心とした作品を手がけるアーティストだ。母親の実家である京都西陣織の機屋(はたや)で下絵に使われている岩絵具と出会い、小学校高学年から過ごした金沢で加賀友禅の工房を営む縁者のもとに頻繁に通っていたことなどから、自然と日本画の道に進んだ。拠点を関東に移した現在も金沢の美しい自然の繊細なディテール、そして古い伝統文化が息づく金沢の街並みなどが、襖絵作品に大きな影響を与えている。

 襖絵では、越前和紙の襖紙に墨と顔彩、雲母、箔などの素材が持つ魅力を最大限に活かし、緊張感のある余白を残しながら伸びやかな線で、草花をテーマに描いているアーティストだが、本展では、墨が主役となっている。

 古来から「墨に五彩あり」と言われるほど表情豊かな墨を「にじみ」「すれ」「たまり」といった偶発的な表現を重要としながら、かねてより心惹かれてきた「線」で大胆に構成した作品を発表。墨や和紙といった日本人に馴染み深い画材が、アーティストの自由な発想と襖絵師としての確かな筆致により、約やかでありながら深い絵画に仕立てられている。