2018.4.14

普遍的な美を一筋の線に込める。
サントミューゼ 上田市立美術館にて
篠田桃紅の展覧会が開催

105歳のいまもなお新たな表現に挑み続ける美術家・篠田桃紅は随筆家としても知られ、近年発行したエッセイなどを通して、作品のみならず思想やライフスタイルも注目を集めている。サントミューゼ 上田市立美術館で4月21日から7月22日まで開催される個展では、約90点の作品と資料を通して表現の変遷をたどる。

篠田桃紅 星霜 1954 (公財)岐阜現代美術財団蔵
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  水墨抽象画という独自のスタイルを確立し、100歳を超えてなお、新たな表現に挑戦し続ける篠田桃紅の個展が開催。国内外で活動を展開してきた作家の初期から現在までの変遷を、約90点の作品と資料を通して体系的に展観する国内初の大規模個展となっている。

 1913年、中国の大連に生まれた桃紅は、父に書の手ほどきを受けたことをきっかけに書の世界に親しみ、文字の形を探求してきた。第1章では、多くの書家が文字へと回帰するなか、墨を用いた独自の抽象を追求した桃紅の、初期から渡米直前までの期間における、書から抽象への変遷をたどる。

篠田桃紅 時間 1958 鍋屋バイテック会社蔵

 第2章では、43歳で単身渡米した後の桃紅の活動を紹介する。桃紅を独自の表現スタイル確立へと導いていった、自由な空気と熱気溢れるニューヨークでの経験。この章では、約2年間のアメリカ滞在に持参した作品群を通して、日本の文字の意味が入り込まない海外で桃紅がどのように理解され評価されたか、あえて海外での発表を試みた桃紅の情熱に迫る。さらに、墨を使った表現スタイルを確立した帰国後の作品、建築に関わる仕事を展示する。

篠田桃紅 月読み 1978 (公財) 岐阜現代美術財団蔵

 そして第3章では、作品を通して日本の伝統・文化を再定義した1970〜80年代、第4章では新たな造形を模索した1990年代以降にフォーカス。

 本展は、移ろいゆくものに心を寄せ、真の美を探求しつづける桃紅の軌跡を目の当たりにできる、貴重な機会となるだろう。

篠田桃紅 百 2012 鍋屋バイテック会社蔵