文字のかたちにとらわれない水墨抽象画という独自のスタイルを確立し、現在までつねに新しい表現に挑戦し続けてきた篠田桃紅。その画業をたどる展覧会「篠田桃紅展 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち」が、横浜のそごう美術館で開催される。会期は4月3日〜5月9日。
篠田桃紅は1913年中国・大連生まれ。5歳の頃から父に書の手ほどきを受けて墨と筆に触れ、以後独学で書を極めてきた。戦後は文字を解体し、墨で抽象を描き始め、56年には単身渡米。ニューヨークを拠点に、ボストン、シカゴ、パリなどで個展を開催した。2年間の滞在を経て帰国した桃紅は、左右分割、明暗対照、朱の赤の効果などが現れる70年代、縦に走る力強い連続線など洗練された80年代と、抽象の形を昇華させ、墨の持つ特性を生かした独自のスタイルを確立していく。
本展では、桃紅が日本古典文学と書法を学び出発した初期の作品から、文字を離れて墨の色や線を追求し、独自の抽象表現を確立したニューヨークでの挑戦とその後、そして余分なものを極限まで削ぎ落として新たな形に昇華し、一瞬の「心のかたち」を追求し続ける現在までの変遷を、約80点の作品と資料を通して展覧。
会場は「第1章 文字を超えて(渡米以前)-1955 」「第2章 渡米─新しいかたち1956-60年代」「第3章 昇華する抽象1970-80年代」「第4章 永劫と響き合う一瞬のかたち1990年代以降」の4章構成。桃紅の長きにわたる画業を年代順に追う。