2025年5月10日〜11月23日にイタリア・ヴェネチアで開催される「第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」。日本館のキュレーターに建築家・青木淳(AS Co. Ltd. 代表)が選ばれた。プロジェクトメンバーには青木のほか、キュラトリアルアドバイザーに家村珠代(インディペンデントキュレーター、多摩美術大学教授)、出展作家としては藤倉麻子+大村高広(アーティストと建築家によるユニット)、砂木(木内俊克と砂山太一による建築ユニット)らが参加する。
青木は1956年横浜生まれ。82年に東京大学修士課程建築学修了。建築家・磯崎新に師事し、91年に青木淳建築計画事務所(現在のAS)を設立した。代表作には「青森県立美術館」(1999)、「ルイ・ヴィトン名古屋・栄」(1999)、「京都市美術館(京都市京セラ美術館)」(リニューアル基本設計、西澤徹夫との共作)などがある。
第19回の総合テーマである「Intelligens. Natural. Artifical. Collective.」に対し、青木が提示した日本館のテーマは「中立点─生成AIとの未来(IN-BETWEEN - A Future with Generative AI)」だ。昨今急速に進化する生成AIは、建築・都市開発の分野においてもそのアップデートのために活用される未来が想像される。いっぽうで、生成AIにはシンギュラリティの到達(人工知能が人間の能力を超えること)への人々の不安や、様々な考え方や価値観が存在する社会において最大公約数的な「正しさ」だけを追求してしまうといった懸念点が存在するのも確かだ。
そのような現状を踏まえ、青木は生成AIと人間の二項対立にとどまらず、「対話」と「つくること」を通じて、その「中立点」を検証。正しさが生み出しかねない凡庸な世界から逃れ、新たな創造の可能性を見出すことを試みるという。
具体的な展示プランとしては、その中立点から日本館の「改装」を映像(フィクショナル)と実物(アクチュアル)から検討。双方の視点から日本館の再解釈を行うことで新たな価値を見出していくものとなる。来場者は、屋外で実際に改装が施された場所を目にしながら、屋内ではプロジェクトチームとAIの対話の過程を経験。その相関関係をもって、日本館の在りうる別の姿を見出すことができるという。
青木はこれについて「生成AIとの不思議な共創関係。フィクションの日本館改修提案から、現実的なものをつくることを試みる」「(実物も重要だが)結果よりも過程を見せることを重要としている」「具体的なことはこれからのため、6人で議論を進めていきたい」と述べている。