EXHIBITIONS

開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ

2024.08.03 - 11.10

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 東京都現代美術館で、都内美術館初となる開発好明(1966〜)の大規模個展「開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ」展が開催される。

 開発はそのキャリアの最初期となる1990年代より、日常生活や社会現象など身の回りの出来事への関心を起点に、コミュニケーションを内包、誘発する表現活動を継続してきた。その形態は、絵画、写真、パフォーマンス、インスタレーションの制作のみならず、日々のライフワーク、学校や地域でのワークショップ、毎年3月9日をアートの記念日とする「39(サンキュー)アートの日」の発案・提唱など多岐にわたる。

 そのなかでも継続的に行っているプロジェクトでは、開発の活動の背景にある哲学を垣間見ることができる。自分や友達に書いた手紙が1年後に届く《未来郵便局》、「誰もが先生・誰もが生徒」を合言葉に授業が行われる《100人先生》、地下スタジオに様々なゲストを招く《モグラTV》は、郵便、教育、マスメディアといった既存のフォーマットを模しながらも、メッセージの発信者と受け手のあいだに等価の関係があることを示唆する。

 そのほか阪神淡路大震災で被災した西日本から東日本大震災と福島第一原発事故の被災地まで義援金を集め移動するチャリティー展覧会「デイリリーアートサーカス」を実施。被災地域の人々との関わりあいや現地での体験はその後、《政治家の家》(2012〜)、失われてゆく地域言葉を収集する《ことば図書館》など様々な福島でのプロジェクトへとつながっていった。これらは個々の小さな声に向き合い淡々と自分にできることを継続する、開発流の「寄り添うアクティヴィズム」とも言える。

 このように社会構造や制度、共同体、出来事への個人的な介入という身振りは、開発の実践の大きな特徴のひとつとなり、その姿を池田修(元 BankART 代表)は「ひとり民主主義」とよんだ。一致団結した運動体ではないからこそ、個々がお互いに反応(リアクション)することができ、それが連鎖的に人々を巻き込むことで活動(アクション)が生まれていく。

 こうした開発の膨大かつ多彩な表現活動は、美術館での収蔵や展示が前提とされていないものも多い。本展では、社会の変化に生身で向きあってきた開発の作品・プロジェクトから約50点を紹介。