鳥越一輝「騰鳥獻輝／月下銀座深夜篇」

　画廊香月で、鳥越一輝による個展「騰鳥獻輝／月下銀座深夜篇」が開催されている。

　鳥越は、国内をはじめ、近年ではアジア、とくに台湾で爆発的な人気を博している。昨年より、台湾、高雄市が進める高雄市美術館近隣におけるデベロッパー計画にも採用され、コレクションがスタートした。コールタール、石膏、珪藻土、煤、顔料、蜜蝋、アクリル、ペンキ、油絵具、ボンド、モデリングペースト、ニス、ストリングジェルといった様々な素材を操り、重厚なマチエールをつくり上げる。

　鳥越の創作に対する願望と想像力は、人間の理性を超越した何かを表現したいという思いとなり、「beyond the stroke」が生まれた。中国語では「超越筆畫」とも呼ばれ始めてもいる。描くときの腕によるストロークの限界を上回る表現方法を導き出した。

　2022年、当時の美術手帖では「九州派の系譜を感じさせるアーティスト」として取り上げられた。過去に示された国内の前衛美術への尊敬と研究は当然として、近年では九州派と同時代に台湾で起きた活動「東方」「五月」にも関心が向けられている。

　台湾での制作、個展を経て、ますます力強い息吹を感じさせる鳥越一輝の作品群。会場では、作品とともに変貌するギャラリー空間を堪能してほしい。