EXHIBITIONS

中田拓法「FLOWER」

中田 拓法 カーネーション 2024 UV インクジェットプリント、偏光紙 78.0 × 51.9 cm © Takunori Nakata

 GALLERY MoMo Projetcsで、中田拓法による個展「FLOWER」が開催されている。本展では、被写体を様々なアングルから撮影し、そこからリアルな3CGを作成するフォトグラメトリを利用した作品シリーズを展示している。

 中田拓法は1982年埼玉県生まれ。2010年「シェル美術賞」、2011年「ワンダーシード」にそれぞれ入選、2014年に多摩美術大学大学院を修了した。大学院在学中の2013年には、ANOTHER FUNCTION(東京・六本木)において、本江邦夫の推薦により初個展を開催。その翌年にはGALLERY MoMo Projetcsでも初の個展を開催し、東京を拠点に発表を続けてきた。2021年には、「WATOWA ART AWARD 2021 EXHIBITION」ファイナリストに選出。また、2022年には、「IMA next#34 Photography and Painting」においてグランプリを受賞した。

 初期作品では、身近な風景と死をイメージさせる人物を、ロマン主義的で幻想的なイメージで描き、次第に風景そのものは現実から離れ、存在しない風景に現実味を与えて表現し、風景の持つ意味について人間の死と交錯させて考えを深めてきた。しかし、中田の言う死は、現実の人間が死ぬということではなく、自身の身近な風景に感じる死の気配である。

 近年では、プログラミング言語を使ったデジタル技術を従来の制作に介在させる作品も展開。そうすることによって、数学的な思考への視点の変更が行われ、伝統的な絵画的言語だけでは到達できなかった概念に触れることができるという確信を持って制作を進め、デジタル技術によって拡張された、第六感的な意味としての新たな霊感による絵画の制作を試みている。

 このように作品を展開してきた中田だが、2022年BankART AIRやANB Studio Programへ参加し、現代の写真表現の多様性のなかに制作の可能性を感じ、新たなリアリズムに挑戦しているようだ。多視点から長時間モチーフを撮影し、一枚の平面画像にした作品は、中田が日常生活のなかで自らが感じている日本の抑圧的な風潮へのひとつの折衷案を表現している。また、このようにフォトグラメトリを利用することで、偶然性が加わり、これまで画家が意図的に構成した画面で成り立つ伝統的な絵画との違いを伺うこともできる。写真、絵画、ARで構成された中田の新たな試みを目撃してほしい。