伊庭靖子「伊庭靖子の見かた、描きかた」

　なら歴史芸術文化村で「文化村クリエイション vol.5 伊庭靖子『伊庭靖子の見かた、描きかた』」が開催されている。

　文化村クリエイションは、先進的な取り組みを行うアーティストを招聘し、制作・発表を行うとともに、創作の過程を開いていく試みだ。vol.5では画家・伊庭靖子を招き、奈良県内でモチーフを探し、なら歴史芸術文化村のスタジオにて3ヶ月間公開制作を行った。

　伊庭は自身で撮影した写真をもとに、精細な油彩画を描く。陶器やクッションといった具体的な対象を描きながらも、それらの「質感」が前景化し、鑑賞者の記憶を呼び起こすような作品の制作を試みてきた。モチーフは匿名性が高く日常にありふれたものが選択され、思い入れは意図的に排除されてきた。

　本展では新作を中心に展示している。約20年ぶりとなる滞在制作で「失敗してもよいから色々試したい」と話していた伊庭。奈良の地域性もあり、モチーフには遺跡から出土した陶片や古墳の風景、近代建築の室内などが選ばれた。