EXHIBITIONS

戸谷成雄 彫刻

2022.11.04 - 2023.01.29

戸谷成雄 森の象の窯の死 1989 東京都現代美術館蔵 撮影=山本糾

 長野県立美術館は、彫刻家・戸谷成雄の展覧会「戸谷成雄 彫刻」を開催する。

 戸谷は1947年生まれ。長野県上水内郡小川村出身。日本の現代彫刻を代表するひとりであり、「彫刻とはなにか」を問う根源的な思索を深めながら、精力的に作品を発表してきた。出身地・長野での初めての個展となる本展では、戸谷の初期から近年の作品まで代表作を含め約30点を展示する。

 本展では、戸谷の壮大な彫刻観へのいとぐちとして、「表面」や「構造」といった独自の彫刻概念に、日本語の言語構造への深い思索が反映されていることに注目する。この思索は、戸谷自身の言葉にしばしば表明されてきたが、作品を目の前に語られる機会は少なかった。日本の社会について戸谷がつねに抱く問題意識は、言語学や人類学の方法論を用いて社会の構造の在り方を問うという、世界的な思想の流れに沿うものであり、戸谷自身の彫刻概念とも重なる部分があるという。

 1980年代半ばから始められた「森」シリーズに見られるように、戸谷はチェーンソーで木材の表面を刻んだ大型の木彫作品がよく知られているが、作品の基本的な考え方は、戸谷が彫刻家を志した70年代にすでに形成されていた。旧来の絵画や彫刻から、美術自体の在り方が問われ始めた当時から、戸谷は制度として解体された彫刻を、時代や地域の枠を乗り越え、その起源から見つめ直している。