EXHIBITIONS

蔵出し蒔絵コレクション

2022.09.10 - 10.16

春日山蒔絵硯箱 日本・室町時代 15世紀 根津美術館蔵 重要文化財

百草蒔絵薬箪笥 飯塚桃葉(初代)作 日本・江戸時代 1771(明和8) 根津美術館蔵

雪華蒔絵箱 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

雪月花三社蒔絵朱盃 原羊遊斎作・酒井抱一下絵 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

御簾葵蒔絵印籠 銘 梶川作 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

 根津美術館が企画展「蔵出し蒔絵コレクション」を開催している。

 蒔絵とは、漆で文様を描いて、その漆が硬化しないうちに金や銀の金属粉を蒔(ま)き付けて装飾する技法のこと。正倉院宝物のなかにその源流と考えられる作例があり、平安時代以降は日本で独自に発達していまに至る。現代でも、漆黒の器表を彩る金色のグラデーションの眩い世界は、人々を魅了し続けている。

 実業家で同館の設立者の初代・根津嘉一郎(1860~1940)がコレクターとして一躍脚光を浴びたのは、蒔絵作品を購入したことがきっかけだった。

 足利義政や書家の松花堂昭乗(しょうかどう・しょうじょう)が愛用したと伝えられる名品《花白河蒔絵硯箱(はなのしらかわまきえすずりばこ)》をかねてから手に入れたいと思っていた嘉一郎は、1906(明治39)年に大阪の豪商・平瀬家の売立にかけられた同作を、当時としては破格の高値で落札、世間を驚かせた。その後も購入は続いたが、とくに晩年に根津美術館の蒔絵コレクションを代表する優品の数々を蒐集した。

 本展は、嘉一郎が蒐集した蒔絵作品の粋をまとめて紹介する初めての機会となる。

 同館のコレクションは、蒔絵史において重要な作品を数多く含むとともに、文房具、仏具、香道具、飲食器、装身具などバラエティに富んでいることが特色のひとつ。これらの用途ごとの展示に技法の豆知識を交えながら、同館では馴染みのあるのものから初公開の作品まで、重要文化財4件を含む約70件によって蒔絵の豊かな世界を展覧する。