EXHIBITIONS

湊 茉莉「あはうみのつちときおく、だいちとのたいわ」

SOKYO ATSUMI
2022.09.23 - 11.19

湊茉莉 あはうみのつちときおく(部分) 2022
信楽透土・顔料・釉薬・シャモット H132×W715×D0.5cm(作品全体サイズ・画像は部分)
Photoby Shoko Hara © Mari Minato - saif 2022

湊茉莉 エトルリア文化シリーズ c-IV 2022
信楽透土・釉薬・銀箔・錫箔 H0.5×W34×D69cm

湊茉莉 あはうみのつちときおく VII 2022
信楽透土・顔料・釉薬・シャモット H1×W28×D21cm

 SOKYO ATSUMIでは、パリ在住の美術家・湊茉莉(みなと・まり)の個展「あはうみのつちときおく、だいちとのたいわ」を開催する。

 湊は1981年京都府生まれ。京都市立芸術大学・同大学院で日本画を専攻、パリ国立美術学校に留学。編入後ディプロマを取得し、現在はフランスを拠点に活動している。パリを中心、日本を含む世界の文化をリサーチしながら滞在制作に取り組む。

 即興性を感じさせる筆致と、鮮やかな色彩によるペインティングで知られる湊。国内外の公共施設や劇場の壁画制作をするなど、空間を大胆に活かした作品を発表してきた。日本では最近、国内初個展となった銀座エルメスでの「うつろひ、たゆたひといとなみ」(2019)や、個展「はるかなるながれ、ちそうたどりて」(京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル、2021)も話題となった。

 本展は、昨年から今年にかけて、滋賀県立陶芸の森で滞在制作した31枚の陶板からなる大作を中心に、パリで描かれた絵画作品も交えたインスタレーションのような空間を展開する。

 展示タイトルにある「あはうみ」とは、淡水の海「みずうみ」を指す古語のこと。古代湖である琵琶湖とほど近い信楽での制作は、考古学・人類学的アプローチを続けてきた湊にとって、多くのインスピレーションを得る機会になったという。

 今回の出品作は、滋賀県立陶芸の森 アーティスト・イン・レジデンス企画展「ながれ-あはうみの つちときおく」で最初に公開されたもので、湊は、信楽の土(陶芸)と水(琵琶湖)、また地域の人々とそれらの関係性にも注視しながら、鑑賞者に新しい発見を与えるような示唆に富む作品を制作した。

 31枚の陶板を敷き詰めて構成される7メートルの大作《あはうみのつちときおく》は、陶板1枚ずつにも湊の世界観が表現されているが、それらがシャモット(焼いた粘土を砕いた粉末)の敷き詰められた台座の上で横並びとなり、鑑賞者は新しい空間を知覚することとなる。このように湊の作品は個々の要素が結びつくことで、より大きな空間を感じ取ることを可能にする。

 また湊はその「場」の記憶や歴史を可視化することをコンセプトに手法や素材を選び、異なる作品同士がゆるやかに関係性を持つ展示空間を織り成すことが重要であると考えている。今回は、海外でも精力的に発表を続ける湊にとって、日本でのリサーチのひとつの到達点ともいえる展覧会となる。