パリ拠点のアーティスト・湊茉莉の日本初個展が開催。メゾンエルメス フォーラムの空間と呼応する瞑想的作品とは?

パリを拠点に活動を行うアーティスト・湊茉莉の日本初個展「うつろひ、たゆたひといとなみ」が、東京・銀座のメゾンエルメス フォーラムで開催される。会期は3月28日〜6月23日。

湊茉莉 Utsuwa *The preparatory study of the facade painting 2018 © Baptiste François

 湊茉莉は1981年京都府生まれのアーティスト。京都市立芸術大学と大学院で日本画を専攻後、パリ国立高等美術学校に留学。現在もパリを拠点に活動を行っている。

 壁面や建築物に鮮やかな色彩で抽象的なモチーフを描く湊。一連の作品群は、大胆で即興的な身振りを思わせるペインティングでありながら、実際は制作する地で目にした風物を描きとめたスケッチをもとにした綿密なリサーチから出発する。「人はなぜ絵を描き始めたのか」をテーマに、欧州文化の礎となったケルトやガリア、古代ローマなどの先住民族の文化についてリサーチを続けている。

 近年はパリやニューヨークでの個展のほか、北アルプス国際芸術祭(2017)、「振る舞いモデル:南隆雄・湊茉莉・八嶋有司」(オオタファインアーツ、2013)といったグループ展に参加。加えて、パリのネッケル小児病院(2014)やパリ国際大学都市のカフェテリア(2018)の常設壁画も手がけた。

湊茉莉 Sans Titre(Série Gaulois)Montrouge, France 2014 © Fabrice Gousset
湊茉莉 Dérives AU dormitory, Nansana, Uganda 2015 © Baptiste François

 そして今回、湊の日本初個展「うつろひ、たゆたひといとなみ」が、東京・銀座のメゾンエルメス フォーラムで開催される。本展のタイトルは「うつろいゆく世界と人々の営み」を意味するもの。このタイトルに沿って、本展は通常のギャラリー展示に加えて、メゾンエルメスのガラスブロックのファサードにも絵が描かれ、建物の内外で変化する時間や光の流れを表現する初めての試みがなされる。

 そのファサードに描かれる《Utsuwa(器)》とは、人類の文明に深く関わる「器」の普遍的な存在と、時間や光の変化と共存しながら周囲の環境を受け入れてゆくガラスの建物のイメージから発想されたもの。ギャラリーでは、黄河文明からメソポタミア、エジプト、イスラムといった異なる文明や文化のなかで重要な役割を担っていた、いくつかのモチーフに焦点を当てた作品が展示されるという。

 石やテラコッタ、骨、鉄、陶などでできた彫像やお守りなど宗教に関わるものや、器や道具といった日常生活品などのリサーチが見い出される相互の文化の混合や交流を、人類学的な視点から重なり合わせた本展。古代へ想いを馳せた瞑想的な作品は、歴史のどんな事柄を映し出し、見る者にどのような痕跡を残すだろうか。

湊茉莉 Chêne, ChâtaigneL’Art dans les Chapelles, Bretagne, France 2012 © Stéphane Cuisset
湊茉莉 Misuzukaru Shinano at Japan Alps Art Festival 2017 © Tsuyoshi Hongô

編集部

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