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中村キース・ヘリング美術館開館15周年記念展:混沌と希望

「人々が肩車をしてバランスを取っている漫画のような版画作品です。そこにはシンプルで何とも言えないヒューマニティとエネルギーを感じました。」 (中村和男、初コレクション作品について)

キース・ヘリング スリー・リトグラフス(ピープル・ラダー) 1985
© Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection

人間の欲望と生への祝福が描かれた本邦初公開となる新収蔵作品。

キース・ヘリング 無題 1984
© Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection

最後の展覧会のために制作した作品。従来の即興的な描画スタイルから一転し、本作では自身の 傑作を目指して生涯培ってきた技術を結集させた。

キース・ヘリング 無題(1988年8月15日) 1988
© Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection

ヘリングが描き続けたベイビーやドッグなど5つのイコンを、特殊印刷を用いて象徴的に表現した版画シリーズの1つ。

キース・ヘリング イコンズ(ラディアント・ベイビー) 1990
© Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection

ヘリングを一躍有名にしたプロジェクト「サブウェイ・ドローイング」は、ニューヨーク市地下鉄で1980年から約5年間制作された。

キース・ヘリング 無題(サブウェイ・ドローイング) 1981-83
© Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection

 今年で開館15周年を迎える中村キース・ヘリング美術館が記念展「混沌と希望」を開催している。

 2007年4月、同館はニューヨークを拠点に活躍したアーティスト、キース・ヘリング(1958〜1990)を紹介する世界で唯一の美術館として、八ヶ岳の麓に位置する小淵沢に開館した。コレクターであり館長を務める中村和男は、1987年にニューヨークで《スリー・リトグラフス(ピープル・ラダー)》に出会ったことを機に、ヘリング作品の蒐集を開始。現在、同館ではおよそ300点の作品のほか、記録写真や映像、生前に制作されたグッズなど500点以上の資料を収蔵するに至った。

 本展では新たに収蔵する作品《無題》を中心に、コレクションの核となる作品約150点を展示。開館初年度の展覧会「混沌から希望へ」を再考し、そのコンセプトをひも解く。

 1978年、ヒップホップ黎明期だったニューヨークに飛び込んだヘリングは、白人至上主義のアート界とマイノリティが集うアンダーグラウンドのパーティーが交差するこの街に衝撃を受けた。それからわずか5年でスターダムにのし上がったが、世界を飛び回る最中に「エイズ」を発症。未知のウイルスとの戦いの末に31歳でこの世を去った。

 現在でも人々を魅了し続けるヘリングが残した底抜けに明るいアートの裏には、混沌とする社会への訴えや内なる苦しみ、希望と自由への強い想いが描かれている。パンデミックや戦争に直面し、価値観の多様化が求められているいま、混沌と秩序、絶望と希望のなかでヘリングが描いたアートは、私たちが世界に向き合うためのヒントをくれるだろう。