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ルーチョ・フォンタナ

Lucio Fontana

 ルーチョ・フォンタナは1899年アルゼンチン生まれのイタリア人画家・彫刻家。建築を学んだ後、ミラノのブレラ美術学校で彫刻を習得。初期には主に陶芸による作品を制作する。1935年にパリの抽象美術のグループ「アプストラクシオン・クレアシオン」に参加。同グループには、ピート・モンドリアン、ワシリー・カンディンスキー、岡本太郎らが集まった。第二次世界大戦が勃発し、ブエノスアイレスに滞在。46年、教鞭を執っていたアルタミラ・アカデミーの仲間や生徒たちと「白の宣言」を起草し、既存の絵画や彫刻を超えて新時代に見合う芸術が必要であることを説く。
 
 戦後はミラノに帰還。47年に「空間主義」を宣言する。49年よりキャンバスに穴を開ける絵画の制作を開始し、51年からはネオン・ライトやブラック・ライトを天井につるすなどした実験的な作品を発表。絵画や彫刻の既存の枠組みを超え、科学の発展とともにある芸術を唱える。代表作の「空間概念」シリーズは、空間とは何かを考察し、キャンバスに穴を開け、ナイフで切り裂き、時に小石やガラスといった伝統的な絵画では画材とならないものを使用。作家の行為の痕跡を見せるとともにキャンバスの奥行きに迫り、絵画の二次元性に縛られない、より開かれた表現を追求する。66年にヴェネチア・ビエンナーレ絵画部門で大賞を受賞。フォンタナの試みはイタリアの「アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)」をはじめ、戦後美術に大きな影響を与えている。68年没。