アピチャッポン・ウィーラセタクンは1970年タイ・バンコク生まれ。映画や映像インスタレーション、写真などにより、夢、家族の物語、抑圧された心理や抵抗の歴史などさまざまな記憶のイメージを表現している。
2010年には、映画監督として、長編映画『ブンミおじさんの森』でカンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)を受賞。日本では16年に個展「亡霊たち」(東京都写真美術館)を開催したほか、今年5月28日まで開催されていた坂本龍一「設置音楽展」(ワタリウム美術館)では、坂本の楽曲に合わせて制作した映像を発表したことでも話題となった。
本展で発表される《メモリア》(2017)は、ウィーラセタクンが母国タイを離れ、コロンビアで制作を行ったプロジェクト。活発な火山活動や地滑りにより、絶え間なく景観を変える地形にインスピレーションを得た一連の写真や映像作品によって構成される。
ウィーラセタクンがこれまでの作品を通じて探求してきた光と暗闇、身体と土地、そして記憶への考察が一層深められ、新たな展開を予感させる作品となっている。