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ありふれていながら、独創的。
謎に包まれた日本画家・不染鉄を解き明かす

7月1日から「没後40年 幻の画家 不染鉄展」が東京ステーションギャラリーで開催。東京初公開となる代表作や新たに発見された作品を中心に、絵はがき、焼物など約120点が展示される。

不染鉄 山海図絵(伊豆の追憶) 1925 木下美術館蔵

 不染鉄(ふせん てつ)は、1891年東京都に生まれ、珍しい経歴を辿ってきた謎多き画家だ。写生旅行で行った伊豆大島・式根島で3年間漁師として暮らしたかと思うと、その後は京都市立絵画専門学校に入学。在学中は第1回帝展に入選し、首席で卒業するなど、画家としての才能を高く評価された。しかし、戦後は表舞台からは離れ、晩年まで飄々と作画を続け、美術館で回顧展が開かれたのは21年前の一度きり。そのため、画業の多くが謎に包まれていた。

不染鉄 林間 1919頃 奈良県立美術館蔵

 20代初めに日本画の技法を習得し、四季折々の山や海、人里にひっそりと佇む家を主題にした作品を多く制作。その後、日本各地を転々と旅した不染は、理想と現実の風景を織り込んだ山水画に着手。戦後は、図画の教員を務めていた奈良県正強中学校の理事長になるが、52年に退任し、画業に専念。伊豆大島・式根島での経験をもとに、海を題材にした作品づくりに没頭した。

 不染は「芸術はすべて心である。芸術修行とは心をみがく事である」とし、潔白な心の持ち主にこそ、美しい絵が描けると信じて、ひたすら己の求める絵に向きあい続けた。本展は、今まで知られてこなかった不染鉄の日本画家としての足跡を辿り、約120点の作品とともに彼の魅力を探る。

編集部

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