ロンドンを中心に活動する覆面のアーティスト、バンクシーは社会風刺的なグラフィティや、ストリート・アートを世界各地にゲリラ的に描くことで知られる。その作品はたびたび政治的なメッセージを含んできたが、今回イギリス南部の港町・ドーバーに現れたのはEUの旗「欧州旗」だった。
作品では欧州旗に描かれた12の星の一つがハンマーによって打ち壊されていく様子が描かれており、ヨーロッパの人々の連帯を表す星の環に、イギリスのEU離脱(Brexit)が亀裂をもたらしたことを意味していると思われる(なお、12という数はEU加盟国の数とは一致しない)。これはバンクシーにとって、初めてのBrexitへの言及でもある。
この壁画が出現したドーバーは、フランスのカレーと34キロメートルという距離にあり、ヨーロッパ大陸ともっとも近い都市だ。歴史的にも欧州大陸とイギリスをつなぐ重要な拠点として機能してきた、いわばイギリスのヨーロッパ大陸への窓口。フランスでマクロン新大統領の就任が決定したこのタイミングで、バンクシーがBrexit批判の作品をドーバーで発表したことは、偶然ではないだろう。