全世界で1億3000万枚以上のアルバムを売り上げ、「20 世紀で最も影響力のあるアーティスト」として認知されているデヴィッド・ボウイ。2016年1月に他界してからは、サザビーズで「ボウイ/コレクター」と題したコレクションの一大セールが開催されるなど、その存在感はますます大きくなってきているのではないだろうか。そんなボウイの50年にわたる創作活動を振り返る本展は、実際に着用した衣装や直筆の歌詞、絵コンテ、レコード、映像など、300点以上の展示品によって構成されている。
監修はV&Aのキュレーター、ヴィクトリア・ブロークスとジェフリー・マーシュ。V&Aでは160年以上の歴史のなかで最多となる約32万人の入場者数を記録しており、ブロークスは本展について「日本と日本の文化はボウイを魅了し続け、彼に多大な影響を与えてきました。ボウイが仕事上いくつもの素晴らしい関係を築き、そしてたくさんのファンのために何度も演奏してきた国である日本は、アジア唯一の開催国にふさわしいと思います」とコメントしている。
会場はすべて「DAVID BOWIE is〜」というフレーズでコーナー立てされており、ボウイの創作過程をたどるような体験ができる。なかでも1972年にBBCの音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』に出演したボウイが、スパイダーズ・フロム・マーズを従えて披露した"スターマン"のパフォーマンスが、衣装と映像によって追体験できるような展示で再現。きらびやかな世界に目がくらむようだ。また楽曲「スターマン」の貴重な直筆歌詞も展示されているのでチェックしてほしい。
ブロークスのコメントにあるように、本展ではボウイと日本の深い関係が提示されていることにも着目したい。日本展のオリジナル展示として、「David Bowie Meets Japan」と題した映像では、大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』(1983)の名場面映像と、共演者の北野武、坂本龍一の撮りおろしインタビュー映像が上映。このほか、山本寛斎が70年代にデザインした独創的な衣装の数々や、ボウイ自身が描いた三島由紀夫の肖像《Head of Mishima》(1977)、楽曲「モス・ガーデン」(1977)に使用された「ミニ琴」など、随所にボウイの日本に対する愛着を感じることができる。
また、本展の大きな特徴のひとつに、その斬新なAV演出効果を挙げることができるだろう。音響・映像監修は、2012年のロンドン五輪開会式の演出にも関わった59プロダクションが務めており、入場者は一人ひとりにヘッドフォンが手渡される。対応する展示の前に立つと、音楽や、ボウイのコメント、インタビューが自動的に流れてくるという手法が取り入れられており、ボウイの世界により深く没入できる仕組みだ。本展クライマックスとなる「ショウ・モーメント」セクションでは、壁一面に四角いスクリーンと衣装が入ったボックスが積み重ねられ、部屋全体でライブ・パフォーマンスを体験してほしい。
完璧ともいえるアーカイブを残したデヴィッド・ボウイ。その7万5000点にもおよぶ所蔵品の中から厳選された300点が並ぶ本展は、ボウイともう一度出会える展覧会と言っても過言ではない。