北斎の魅力とは何か? TikTokナビゲーターとともに見る「北斎づくし」展
アートの面白さを伝えるべく、数多くの美術館やギャラリーがTikTokで展覧会の模様をLIVE配信するようになっている。現在、六本木の東京ミッドタウン・ホールで開催中の特別展「北斎づくし」もそのひとつだ。日本のTikTokユーザーに向け8月13日に配信され、非常に好評だったTikTok LIVEの模様は、翻訳音声をつけて9月6日に約25ヶ国に向けてグローバル配信されることも決定した(PR)。
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特別展「北斎づくし」は、その展覧会名のとおり日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎に特化した展覧会。彼の代表作である『北斎漫画』「冨嶽三十六景」『富嶽百景』の全頁・全点・全図を通期で展示するという、非常に大規模なものだ。
8月13日に開催されたTikTok LIVEでは、『北斎漫画』世界一のコレクターであり浦上蒼穹堂の代表の浦上満、そしてフォロワー140万人を超える人気TikTokクリエイターの神堂きょうかが、LIVE配信を通じて、強烈な北斎ワールドを紹介した。
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まず二人が足を踏み入れたのは壁や床も北斎の絵で埋め尽くされた広大な展示空間。国際的に注目を集めている建築家・田根剛のデザインによるものだ。この空間にすべての『北斎漫画』の初編から15編まで、序文から奥付まですべてのページが展示されている。その広さだけでも北斎の仕事の膨大さが見て取れる。ちなみに、展示されている『北斎漫画』はすべて浦上のコレクション。50年以上をかけて集めたもので、TikTok LIVEでは各編、各ページを丁寧に解説していった。
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北斎が『北斎漫画』の初編を出版したのは55歳。江戸時代で50代はすでに老人とみなされていた年齢だ。当時すでに人気絵師だった彼には門人も数多くいたという。そこで、より多くの門子に指導ができるよう絵手本をしたためようとしたのが『北斎漫画』出版のきっかけであった。けれども、実際は初編の序文で「気の向くまま漫(そぞ)ろに描いた画」と北斎自身も述べているように、描きたいものを描く本になっており、そこに人気が集まっていったという。
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『北斎漫画』は絵手本の域を遥かに超える勢いでベストセラーとなり、十五編まで続くシリーズとなった。日本だけではなく、海外でも注目され、印象派の父とも称されたエドゥアール・マネも模写を行ったという。
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細かい筋肉の描写に圧倒される「風神・雷神」や、お座敷芸をユーモラスに描写したページなど、緩急取り混ぜたバラエティ豊かな描写は、現在のわたしたちの心も掴んで離さない。神堂も「麒麟や龍など、見たこともないものも見てきたかのように描く北斎はすばらしい」と、すっかり北斎の絵に魅了されたようだ。
このため、浦上の解説もヒートアップ。『北斎漫画』のコーナーだけで30分以上たっぷりと解説が行われた。浮世絵の人気に押されて、展覧会ではなかなか注目されない『北斎漫画』だが、TikTok LIVEを通じて北斎の画力に圧倒されたというコメントも多く、多くの人達の関心を集めたようだ。
続いて二人が訪れるのは、北斎の代表作のひとつ「冨嶽三十六景」の展示室。ここには、「冨嶽三十六景」全46作(北斎は当初36作品で発表したが、好評につき10作を追加)がずらりと展示されている。浮世絵は光に弱く、長い間展示することができない。そのため、「この展覧会のように会期いっぱい『冨嶽三十六景』を見られる機会はめったにないこと」と浦上は語る。
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「アクロバティックで構図がちょっと大げさだという人もいる」と浦上が紹介するのは《遠江山中》。巨大な角柱を立て掛けた丸太の間から富士山を望む、北斎が得意とする構図の作品。神堂は「構図もすごいが、背景の煙の描写も美しい」と感嘆の声を上げた。浦上によると、北斎の作品は摺りが早いものほどグラデーションの美しさが際立っているという。
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「冨嶽三十六景」のなかでもとくに人気の高い3作は「三役」と呼ばれている。《凱風快晴》もそのひとつ。赤富士という通称も持っている。神堂も「《凱風快晴》は見たことがあります。『冨嶽三十六景』という名前はよく聞くけれど、こんなにたくさんの作品があることは知りませんでした。ひとつの空間で見ることができてうれしいです。初めてみる作品も面白いものばかり」と、新しい作品との出会いを楽しんでいた。
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同じく三役のひとつ《山下白雨》は、右下の意匠化された稲妻がポイントだ。山頂は快晴であるところから、山の天気の変わりやすさを北斎が正確にとらえていることが伺える。
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三役のフィナーレを飾るのは、世界でもっとも有名な北斎作品と言われている、《神奈川沖浪裏》。「欧米ではThe Grate Waveと呼ばれています」と浦上。「相似形をなした手前の波と富士山、画面を占める大きな波と動かない富士山など、この作品は構図のなかにさまざまな対比構造が見えておもしろい」と《神奈川沖浪裏》の作品としての魅力をわかりやすく語ると、コメント欄にも感嘆の声が寄せられていた。
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濃密な北斎の作品の感想の合間には、気軽な気持ちで楽しめるコーナーも用意されている。DIGITAL HOKUSAIのコーナーは、『北斎漫画』や「冨嶽三十六景」の高精細アーカイブデータを使った没入シアター。壁面の大型スクリーンと、和紙製の特製スクリーンを組み合わせて、北斎の世界を表現する。どんなに大きく引き伸ばしても破綻がない点から、二人は北斎の画力にあらためて感銘を受けていた。
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そして、再び力強い北斎の世界へ。寛政の改革以降に大ブームとなった読本は、伝説の英雄などを主人公にした江戸時代のエンターテインメント小説。北斎は曲亭馬琴とタッグを組み、時には馬琴と喧嘩をしながら挿絵を手掛けた。その迫力ある描写は、現在の漫画にも通じるものを感じさせる。
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そして、最後のセクションとなる『富嶽百景』へ。「冨嶽三十六景」とは異なり、富士山にまつわる神話や伝説を踏まえて北斎が描いた富士山の絵本。大胆な構図や緻密な描写から、北斎絵本の最高傑作とも言われている。
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北斎の魅力を余すことなく伝えた浦上と神堂は、ショップもレポート。「たくさんグッズを紹介したいけれど、種類が多すぎて伝えきれない」という神堂がもどかしい気持ちの表明しつつ、TikTok LIVEは終了した。
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今回、TikTokクリエイターの神堂きょうかのナビゲートにより、それまでアートの世界に興味を持たなかったユーザーも多く視聴し、コメントも活発に寄せられた。葛飾北斎、そしてアートに関心を持つユーザーを開拓できたことは、展覧会関係者、ならびにアート業界にも非常に有意義だったはずだ。幅広い層に発信が可能なTikTokクリエイターらとコラボは、今後のTikTok LIVEでの展覧会紹介で活発になりそうだ。
主催側は、今回のTikTok LIVEについて、次のように振り返る。「本展覧会は、美術に関心の高い人だけでなく、国内外のこれからの時代をつくっていく世代の方々に北斎の魅力に触れていただきたいという思いも込め、企画や会場づくりなどを行っておりました。COVID-19の影響で、遠方からは会場へ来ていただくことが難しい環境のなか、この企画を通じて、その思いが実現できたことを嬉しく思います」。
なおこの「北斎づくし」のTikTok LIVEは、9月6日20時(日本時間)より、翻訳音声を施して、約25ヶ国に配信されることが決定した。これは世界中に幅広いユーザーを抱えるプラットフォームであるTikTokだから可能なこと。日本の美術館やギャラリーの魅力を世界に発信可能なTikTokの可能性に今後も期待したい。