東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とし、政府が推進する「日本博」及び「日本美を守り伝える『紡ぐプロジェクト』」の一環となっている、東京国立博物館の、ユネスコ無形文化遺産 特別展「体感!日本の伝統芸能―歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界―」。日本の伝統芸能である「歌舞伎」「文楽」「能楽」「雅楽」「組踊」を通じて「日本の美」に迫る展覧会だ。
5つの芸能の舞台が各展示室内に再現され、間近で見ることができるだけでなく、実物の装束・衣裳、楽器、小道具等の展示とともに、伝統芸能を臨場感とともに楽しむことができる。
まずエントランスでは、歌舞伎の源流である「かぶき踊り」の様子を描いた国宝《花下遊楽図屛風》(17世紀)の高精細複製品を展示。関東大震災の際に向かって右隻中央部分が失われたが、今回展示される複製品は損失部分をガラス乾板の画像をもとに再現したものだ。
第1章「歌舞伎」では、歌舞伎の代表作である『義経千本桜』をテーマに、桜花爛漫の吉野山の明るく華やかな舞台を再現。ほかにも、明治期に活躍した浮世絵師・豊原国周の描いた錦絵や、舞台で使用される仕掛け付きの小道具、華やかな歌舞伎衣裳・鬘を見ることができる。第2章は「文楽」。『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』の「奥庭狐火の段(おくにわきつねびのだん)」の再現舞台により、文楽特有の舞台の構造を可視化。3人で1体の人形を動かす「三人遣い」を紹介する。
第3章は「能楽」。能面と縫箔(ぬいはく)の豪華な装束に、長絹と初冠を着けた姿を、世阿弥の能を代表する『井筒』の舞台で表現。自然を写す草花の模様を取り入れたデザインを見ることができる。第4章は琉球王朝の音楽劇「組踊」を取り上げる。首里城正殿の御庭に設置された、御冠船芸能の舞台を再現するとともに、沖縄の故事にある天人女房譚に取材した組踊『銘苅子(めかるしー)』の天女を立体的に展示する。
第5章は「雅楽」は、西国の人が蛇を求め得て喜ぶ姿を舞にした『還城楽(げんじょうらく)』をマネキンで再現。正式な舞楽で用いられる高さ5メートルの巨大な「鼉太鼓(だだいこ)」を設置する。
5つの伝統芸能を一度に体感できる同展の魅力を、画像で少しでも体感してもらいたい。