十分とは言えない作品購入予算や現代美術作品の保存の難しさなど、開館から27年が経ついま、様々な問題に直面する高知県立美術館。美術館がつかさどる「収集」と「保存」というふたつの機能に着目し、新たな切り口からそのコレクションを紹介するのが「収集→保存 あつめてのこす」展だ。
まず1章では、2018・19年度の新規収蔵品の一部をお披露目。2~3章では土佐の祭礼を彩った絵金派の芝居絵屏風や、岸田劉生による妻の肖像画といった人気作品が「どうしてここにあるのか?」という問いに答えるほか、バスキアやリヒターなど、1980~90年代だからこそ収集できた同館のコレクションの核も一挙に展示。その意外な収集経緯を紹介する。
続く4章では、1998年の豪雨によって同館の収蔵品108点が被災した歴史を振り返り、被災作品を修復前の写真資料とともに展示。5章で注目したいのは、土など多様な素材を用いたアンゼルム・キーファー《アタノール》(1988-91)の、ミクロの視点から作品の組成に迫る最新の科学分析結果だ。また、同じく作品の「保存」という観点からは、ブラウン管テレビを用いたナム・ジュン・パイクの作品など、それらを残す難しさと課題を考察する。
そして6章では、いまや修理が難しい旧型のプリクラ機を用いた森村泰昌《モリクラ・マシーン》(1998)や、生産が減り続けるネオン管を用いた柳幸典《ヒノマル・イルミネーション》(1992)にフォーカス。作品とともに、学芸員が作家本人に作品の保存について問いかけたインタビュー映像を併置する。