ガウディやピカソ、ミロをはじめ、多くの芸術家たちを魅了してきたスペイン・カタルーニャ自治州の州都バルセロナ。東京ステーションギャラリーに巡回した「奇蹟の芸術都市バルセロナ」は、同地で芸術がもっとも成熟した約80年間にスポットを当てた展覧会だ。
19世紀半ば、バルセロナの街は近代化が進み、1888年には万国博覧会も開催。カタルーニャ独自の言語と文化の復興運動「ラナシェンサ」が興り、文化的アイデンティティが確立されていく。19世紀後半には、都市の中心部にリュイス・ドゥメナク・イ・ムンタネー設計の「カザ・リェオー・ムレラ」、アントニ・ガウディ設計の「カザ・バッリョー」などの邸宅が建ち並んだ。
19世紀末には、パリに渡った画家サンティアゴ・ルシニョルが、総合芸術を目指す「ムダルニズマ祭」を主宰。また97年にはルシニョルら4人がバルセロナにカフェ「四匹の猫(アルス・クアトラ・ガッツ)」をオープン。若きピカソも通い、初めての個展を開いた同店は文化の発信地となった。
その後は98年の米西戦争敗北を機に、カタルーニャではスペイン中央政府との対立が激化。保守的思想が強まりを見せ、芸術ではかつて繁栄した地中海文明への回帰を特徴とする「ノウサンティズマ(1900年代主義)」と呼ばれる動きが誕生した。そして1936年7月にはスペイン内戦が勃発。反乱軍と結託したドイツ軍がバスク地方ゲルニカを攻撃し、ピカソをはじめとする多くの芸術家が立ち上がった。
本展には絵画、ドローイング、彫刻から家具、宝飾品まで約130点が集結。世紀末カタルーニャの熱気を伝える内容となった。なお4月末には、会場の様子を伝える動画が美術館の公式ウェブサイトで公開予定。