日本画家としていまでも広く知られ、明治から大正にかけては、文芸雑誌や小説の単行本の口絵というジャンルで活躍した鏑木清方(1878~1972)。いっぽう、清方と人気の双璧をなしていた鰭崎英朋(ひれざき・えいほう、1881~1968)は、清方と同じく月岡芳年の系譜に連なり、2人は美術団体「烏合会」に属した友人同士でもあった。
本展では、清方と英朋による、明治の美しい女性たちを描いた口絵の名品を紹介。文芸雑誌や小説の単行本の巻頭を華やかに彩った木版口絵のコレクションとともに、清方と英朋より以前に活躍した知られざる挿絵画家、武内桂舟、富岡永洗、水野年方、梶田半古の4名の作品も展示。
見どころの作品は、英朋が泉鏡花の著書のために手がけた『続風流線』(1905)の口絵。本作は竜巻で転覆した船から女性を救助する一場面で、画面全体には流れる水が描かれ、水の中にいる人物の体がうっすらと見えるという、斬新な構図と高度な摺りの技法を見ることができる。