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近江八幡の歴史的建造物を実力派アーティストが作品化。未来の「きざし」を表現する
BIWAKOビエンナーレ2018

今年も夏から秋にかけて、日本全国で様々な展覧会や芸術祭が目白押し。作品との出会いはもちろん、その場所でしか見られない景色や食事も一緒に楽しめるスポットをピックアップ。第7回は、滋賀県近江八幡で開催されるBIWAKOビエンナーレ2018を紹介する。

文・構成=小林紗友里

井上剛 ヒのマ ─門─ 2016 BIWAKOビエンナーレ2016での展示風景

 虫籠窓のついた中二階建ての町家が連なり、八幡堀に舟が浮かぶ近江八幡旧市街は、豊臣秀次が築いた城下町をもとに、近江商人発祥の地として発展。いまでも江戸時代の風情を残し、国の重要伝統的建造物保存地区に選定されているが、なかには放置された空き家も多い。そうした町家を有志で清掃し、アーティストたちの手に委ねて空間を作品化しているのが、BIWAKOビエンナーレだ。

池原悠太 幻視 2016 BIWAKOビエンナーレ2016での展示風景

 今回のテーマは「きざし~BEYOND」。「作家たちによって表現されるさまざまのきざし、明るい未来へとそのきざしが紡がれていくことを願っています」とは総合ディレクターの中田洋子。海外生活を送るなか、地元大津で2001年にBIWAKOビエンナーレを立ち上げた。そして翌年、近江八幡の町並みに魅せられ、会場を移したという。

八幡堀。近江八幡は江戸時代に水運によって発展し、近江商人を生んだと言われる。
屋形船で遊覧したり、堀脇の遊歩道を散歩することもできる。

 国内外約70組の作家の選定は彼女によるもので、その条件は「まず私自身が感動できる作品であること」。例えば、榎忠が元酒工場の大空間で8トンもの薬莢を使ったインスタレーションを行い、2015年の岡本太郎現代芸術賞で霊柩車形の作品が特別賞を受賞した江頭誠が元畳問屋の離れを毛布を使って丸ごと作品にする。ほかにも実力派アーティストたちの作品が十数ヶ所、徒歩圏内のエリアに点在。八幡山山頂にロープウェイで見にいく作品もあり、碁盤の目状の町並みを見下ろすこともできる。古い建物での展示は芸術祭では珍しくないが、ここで体験できる美術は一味も二味も違うのだ。

榎忠 薬莢 / Cartridge 2012 兵庫県立美術館 撮影=豊永政史(SANDWICH GRAPHIC) © Chu Enoki

総合ディレクター 中田洋子さんに聞くみどころ

 アーティストたちによる渾身の作品とともに、建物たちが蘇るさまを見て、感動を味わっていただければ幸いです。また、会場のひとつである「遠久邑(おくむら)」さんの佃煮は本当に美味しいのでおすすめです。町家を改装したゲストハウス「MACHIYA INN」は私がディレクションして、滋賀の作家による作品を設えました。周辺には「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」やヴォーリズ建築の数々、藤森照信さんが設計した「ラ コリーナ」などもありますよ。

江頭誠 お花畑 2016

参加アーティスト

榎忠、小曽川瑠那、江頭誠、田中誠人、田中真聡、田中太賀志、草木義博、長谷川早由、井上剛、山田正好、菱田真史、野田拓真、オージック、ライアン・ヴィラマエル、ガブリエラ・モラウェッツ、マチュー・キリシ ほか

『美術手帖』2018年8月号「この夏・秋に行きたい!全国アートスポットガイド」より))

編集部

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