鏡と光が生み出す無限の空間
4階ギャラリーでは、電飾を用いたミラールームのインスタレーション《無限なる天国への憧れ》(2020)が展示されている。草間が初めてミラールームを発表したのは1965年。その翌年には電飾を取り入れた作品も制作され、以来、鏡と光を用いた空間表現は草間の代表的なシリーズのひとつとなった。

《無限なる天国への憧れ》では、色とりどりの電飾が鏡面に反射し、光がどこまでも続いていくような空間が生み出される。2階で紹介された「無限の網」が絵画の表面に奥行きを生み出していたのに対し、ここでは光が画面を離れ、鑑賞者を取り囲む空間そのものを構成する要素となっている。鏡に映り込む無数の光は、自己と周囲の境界が曖昧になるような感覚をもたらす。草間が長年にわたって追求してきた「自己消滅」という主題とも結びつく表現だ。
さらに5階の屋上ギャラリーでは、《ナルシスの庭》(1966/2026)と、日本初公開となる《天国への梯子》(2024)が紹介される。

《ナルシスの庭》は、1966年の第33回ヴェネチア・ビエンナーレで発表された作品で、無数の鏡面球が周囲の風景や鑑賞者の姿を映し出す。鏡面に反射した像が互いに重なり合い、現実の空間を作品の内部へと取り込んでいく。いっぽう、《天国への梯子》では、梯子の上下に配置された鏡が互いを反射し合うことで、梯子が果てしなく上下に伸びていくような視覚効果を生み出す。

こうした作品において、光はもはや絵画に描かれる対象でも、素材の表面に生じる効果でもない。周囲の環境や鑑賞者の存在を巻き込みながら、作品空間そのものを成立させる要素となっている。
幼少期の幻覚に由来する内面的な光から、網目による絵画空間、鮮烈な色彩、素材の反射、そして鏡を用いた無限の空間へ。草間の全画業を貫く「光」という主題を通じて、その表現がいかに変化し、拡張してきたのかを振り返る展覧会となっている。



















