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「藝大取手コレクション展 2025」(東京藝術大学大学美術館 取手館)レポート。取手の藝大美術館が再始動。地域に開かれたコレクション展【4/4ページ】

 藝大では、開学当初から学生教育に資するための芸術資料が収集されてきた。これらの資料は取手館のみならず外部倉庫でも保管されてきたが、昨年の取手収蔵棟の竣工により十分なスペースが確保され、整理・研究が進んだことで今回の展示が実現したという。

 最終セクション「過去に学ぶ:未来へ繋ぐ教育資料」では、藝大の教育を支えてきた貴重な資料が公開されている。いずれも教育目的で収集されたため、一般に目に触れる機会はほとんどない。藝大で学ぶ学生の高い基礎力は、こうした先人たちが守り築いてきた資料の蓄積によって育まれてきたのだと実感させられる。

展示風景より、「過去に学ぶ:未来へ繋ぐ教育資料」
展示風景より、「過去に学ぶ:未来へ繋ぐ教育資料」。手前の埴輪は藝大で日本画の教授も務めた前田青邨が所蔵していたもの。奥にはデッサンで使用される石膏像や、本邦初の国内産オルガンも紹介される
展示風景より、《伝 岡倉天心使用の椅子》

 取手館および取手キャンパスは開館30周年を契機に、新たなフェーズに入りつつある。28年ぶりとなるコレクション展に加え、収蔵棟では“魅せる収蔵庫”としてスタッフによるガイドツアーも定期的に実施されており、キャンパス全体として積極的に地域との接点をつくり、街に開かれた取り組みが進められているようだ。

 さらに、同キャンパスは今年、実業家である故・安田容昌氏から10億円の寄付を受け、「東京藝術大学取手キャンパス 安田容昌・安田祥子基金」が設置された。寄付金は、施設設備の再整備や、キャンパスと周辺地域が一体となって活性化する環境づくり、さらに芸術文化の新たな創造拠点としての発展に活用される予定だという。今後、藝大取手キャンパスはこれまで以上に地域に開かれた拠点として、新たな価値を創出していくことが期待されている。