瀬戸市のまちなか
今回、初めて会場となった窯業が盛んな瀬戸市内では、元銭湯や商店、小学校など地域の建物を活用した展示が展開されており、街中を散策しながら作品が楽しめる。
ガラスを使う気鋭の作家・佐々木類は、瀬戸の古民家で使われていたガラスやガラス会社に残っていたガラスを用いて、植物を用いた繊細なインスタレーションを、大正期に建てられ、2021年に閉店した旧日本鉱泉で発表。何度も瀬戸に足を運んだ佐々木は、地元の人々と採取した植物をガラスの中に閉じ込めた。かつて地元民が集う場であった浴室に、土地の記憶を宿す植物が美しく浮かび上がる。


マイケル・ラコウィッツは、イラク系ユダヤの背景をもつアメリカの作家。2003年から続けている、古代アッシリア帝国(現在のイラク北部)の首都カルフ(ニムルド)の宮殿にかつてあった200枚のレリーフパネルを実物大で複製するプロジェクトのうち7点を見せる。作品の素材には食品のパッケージや新聞紙が使われており、遺物の儚い運命と資本主義によって埋もれる声を重ね合わせる。

商店街を歩いていると出会う、マジックミラーが貼られたポップアップスペース。かつて八百屋だったこの場所では、冨安由真によるインスタレーション《The Silence (Two Suns)》に没入したい。瀬戸の鉱山で珪砂を精製する過程で寄り分けられた不純物が一面に積もる室内。目を凝らすと、瀬戸の磁器土でつくられた1万4000個もの花が散らばってる。「灰と薔薇のあいまに」というテーマに呼応する本作は、人間の争いの末路を示すかのようだ。

実際の鉱山施設である加仙鉱山株式会社では、オーストラリア出身で先住民族ヤウル族の末裔であるロバート・アンドリューが作品を展示。《内に潜むもの》は、ゆっくりと引っ張られた糸が振動しながら粘土、顔料、そして土の層を掘り起こし、壁面に螺旋状の形態を創出。いっぽう《ブルの言葉》は、天井からら滴が落ち、土の中に隠された文字が浮かび上がるというもの。ヤウルの長老からもらった言葉「ブル」(大地から空、そして時間を含む、周りに見えるすべてのもの)を出現させる。

旧瀬戸市立深川小学校では、彫刻家アドリアン・ビシャル・ロハスが壁紙を使った大規模なインスタレーション《地球の詩》を1階全体で展開。人間が誕生する以前、あるいは滅んだ後の世界を想起させる大作となっており、人間の歴史と記憶を再考する機会を与えてくれる。






















