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「生誕120年 人間国宝 黒田辰秋―木と漆と螺鈿の旅―」(京都国立近代美術館)開幕レポート【3/3ページ】

 木工芸や漆芸といった領域で数々の代表作を生み出した黒田だが、作家をもう一歩語るうえで欠かせないのが「螺鈿」の技法を用いた作品だという。黒田の螺鈿作品は、模様を描くために素材をはめ込むといったいわゆる古典的な装飾方法は採っておらず、貝の異なる質感をいかに美しく引き出しながら作品化するかというところに重きが置かれている。その配置が見せる表面のグラデーションや凹凸は目を凝らして見たくなるほどだ。

展示風景より、手前は《螺鈿市松文手筐》(1937)
展示風景より、《耀貝螺鈿飾箱》(1974頃)
展示風景より、《螺鈿瓜形棗》(1949)

 先に触れた通り、黒田は古典から学びつつもその在り方を疑い、研究し、独自の表現を生み出しながらも、実用性との両立を何よりも大切にしていた。人々の日常生活のなかに溶け込みながらも、決して存在感を失わない黒田作品の妙がここにあるのだと本展を通じて理解することができるだろう。

編集部

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