第2部となる「用と美の邂逅」では、黒田の仕事の特徴を「民藝」「木」「塗」「螺」のいった4つのキーワードから深掘りしている。「黒田は一般的に民藝の作家だと言われているが、自身ではあくまでも個人作家であると考えていたようだ」と大長。そこには、柳宗悦が提唱した「用の美」にもあるように、日常生活における工芸の機能美に賛同しながらも、自身が生み出した作品に対する強い責任感が表れているのだという。
黒田の木工芸作品と言えば、全体的な佇まいや装飾からうかがえるおおらかさが印象的だ。とくに彫りのデザインは朝鮮家具の特徴を取り入れながらも、そこに自身のアイデアを組み込むことで独自のものへと進化させている。また、黒田が好んだ技法のひとつに「拭漆」が挙げられるが、この手間のかかる技法を取り入れることで、素材の持つ魅力をより引き出している。
このように、既存のアイデアや技法を、素材本来の美しさを引き出すためにどのように取り入れていくかといった研究・実践からも、黒田の個人作家としての在り方をうかがい知ることができるだろう。