昨年リニュアルオープンした皇居三の丸尚蔵館で、企画展「いきもの賞玩」が始まった。会期は9月1日まで。
昨年11月から今年6月にかけて、同館は開館記念展「皇室のみやび─受け継ぐ美─」を4期にわたって開催し、同館の収蔵品から国宝を含む様々な作品を紹介した。
今回の展覧会は、同館のコレクションのなかから動物や植物に関わるテーマに絞った作品を紹介するもの。同館館長の島谷弘幸は開幕に際し、「夏休みを控えたいま、お子さん連れの方々にも楽しんでいただけることを意識して企画した」と説明している。
展覧会は3部構成。「詠む・描く」では、書跡から昆虫や鳥を詠んだ詩や和歌、絵画から動物が描かれている場面の絵巻などが展示。「かたどる・あしらう」では、かつて明治宮殿などを飾るためにつくられた花瓶や壁掛けをはじめとする数々の工芸品、「いろいろな国から」では、世界各国から贈られたその国の伝統工芸品や、国を代表する作家による美術品などが紹介されている。
本展の白眉は、伊藤若冲の国宝《動植綵絵》から前後期にわけて展示される2幅だと言える。8月4日まで展示されている《芦鵞図》は、水墨で描かれた背景に1羽のガチョウが描かれたもので、非常にシンプルな構成になっている。
同館副館長の朝賀浩は同作について、次のように語っている。「この作品では、若冲が鳥の羽をどのように観察し再現しているかが非常にわかりやすく示されている。白い羽根の部分は、裏側から黄土色を使い、表から細い白い線を重ねるように描かれており、微妙に金色に輝いて見えるという表現が若冲ならではのものだ。この作品をじっくりご覧いただき、若冲の表現力の素晴らしさを改めて感じていただければと思う」。
8月6日から展示が始まる《池辺群虫図》は、カエルやオタマジャクシ、ゲジゲジなど、様々な動物や虫が描かれた作品。「若冲の独創性が際立つ一幅。このようなモチーフをこれほどまでに細かく描いた画家は前にも後にもおらず、日本や東洋のほかの地域でも見られない独特の作品だ」(朝賀)。
また、冒頭部に展示された掛幅には本紙にいきものが描かれていないが、その上下の表具にはカササギなどが飾られている。例えば、伝 飛鳥井雅経作の《和歌色紙》は、後西天皇の好みの仕立てと伝わっている。こうした作品では、本紙だけでなく、表具やそれを愛好した人物の個性を楽しむこともできる。
続く第2部では、四季の移り変わりや日常のなかで、人々の生活に寄り添ういきものをテーマに、置物や実用品のデザインに取り入れた多様な表現が見られる。最後の部分で展示された海外の品々からは、異文化におけるいきもののとらえ方の違いを感じとることができる。神聖なもの、あるいは愛らしいものとして表現された様々ないきものを、ぜひ同館の収蔵品を通じて楽しんでほしい。