北欧の暮らしにおける美しいデザインの数々から、その思想を垣間見ることができる「日本橋高島屋開店90年記念『ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展』」が東京・日本橋の日本橋高島屋 S.C. 本館8階ホールでスタートした。会期は3月21日まで。
本展は、椅子研究家・織田憲嗣(おだ・のりつぐ)が約半世紀にわたって収集・研究を行ってきた、世界的にも高い評価を得ている「織田コレクション」(北海道東川町所蔵)をもとに会場を構成。同コレクションは昨年、東京都美術館で開催された「フィン・ユールとデンマークの椅子」でもその中心的な役割を果たしている。
会場では、家具からインテリア、食器まで総勢70名以上のデザイナーによる300点以上の作品が展示。アルヴァ・アアルトやフィン・ユールのプロダクトシリーズ、タピオ・ヴィルカラによる《ボーレ》といった北欧デザインを展覧でき、19世紀末から同地に起こる「美が人生を豊かにする」という考えが、暮らしのあり方に反映されていることが窺い知れる。世界に2点だけ存在するハンス J・ウェグナー《ザ・チェア プロトタイプ》が見られるのも織田コレクションならではだ。
開催に際し、織田は本展の意図を次のように述べた。「本展では北欧デザインを通じて、その地における『ていねいで美しい暮らし』を垣間見ることができる。現在国内ではジェンダーや環境、エネルギーなどに関する様々な問題を抱えているが、北欧はそれらに対して60年代の頃から課題感を持ち、取り組み、解決してきた。その『美しい暮らしが人を幸せにする』考えがデザインにも表れているとも言える。このような視点からも、いま北欧に学ぶことがたくさんあるのではないでしょうか(一部抜粋)」。
また北海道東川町では、織田コレクションや旭川家具をはじめとする収蔵品から地域の豊かな暮らしの発信を目指す「KAGUデザインミュージアム(仮称)」の建設が予定されており、2022年11月には建築家・隈研吾らをはじめとする「東川町・KAGUデザインミュージアム建設支援の会」も発足。その設立を推進している。
現在国内では「デザインミュージアムの設立」について議論される場が増えており、2012年に三宅一生により提言された「国立デザインミュージアム」設立の動きも加速している状況だ。
これらのプロジェクトの関連性については未だ定かではないが、人々の生活に密接である日本のデザインを俯瞰し、より豊かな暮らしのあり方を思案していくための施設としてはどのようなかたちがベストなのであろうか。国内デザインミュージアムの動向にも引き続き注目していきたい。