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ゴームリーが最新作を通して語りかけるもの。「アートの責任は考察と自己認識のチャンスを人々に与えること」

アントニー・ゴームリーのエキシビション「ボディ・ポリティック」が、ロンドン東部に位置する、コンテンポラリーアートのギャラリーとして名高いホワイトキューブ・バーモンジーで開かれている。長年のキャリアを通して、人体を探求し続ける彼の新たな作品5点をそれぞれ個別の空間で見せる興味深いものとなっている。会期は2024年1月28日まで。

文=坂本みゆき

展示風景より、《Resting Place》(2023) © Antony Gormley. Photo © White Cube (Theo Christelis)

 このエキシビションは、異なる5つの作品を通し、人間の体とインダストリアルの関係に迫ることを目的としているという。コンクリートやリサイクルされたスチール、古い地層を掘り起こして得た土でつくられたブロックなどを素材に、人の体のフォルムとその動きを考察する。キューレーションはゴームリー自ら手がけているという。

 展示はまず、前庭からギャラリー内の廊下に続いて設置された8つのコンクリートの連作《Retreat》からスタートする。六面体をつなげてつくられた人体を思わせるこれらは、リラックスしたものや緊張が感じられるものなど、様々なポーズを取りながらも独特のオーラを放ち、高い天井とゆったりとした広さを持つこのスペースを満たしている。それぞれの顔を思わせる部分には口のような小さな四角い穴が空いており、そこから中を覗くことができる。この作品に関してゴームリーは「真の自由を見つけ出すことができる唯一の場所は、静止している時の体内に現れる無限の闇のなかである」と語っており、この小さな口はそれを覗き込むためのものであるようだ。

展示風景より、《Retreat》(2022−23) ©Antony Gormley. Photo © White Cube (Theo Christelis)
展示風景より、《Retreat》(2022−23) © Antony Gormley. Photo © White Cube (Theo Christelis)

 エントランスから向かって左側手前のサウスギャラリーⅠと名付けられた部屋には《Bind》が置かれている。天井から床、左右の壁、部屋の外から奥の壁までに渡された3本の細長いリボン状の黒いスチールが、それぞれ何度も直角に折り曲がり交差しながら人のフォルムをつくり出している。リボンの下をくぐったり踏み越えたりしながら、360度それぞれの角度から中心部分を眺めることで、違った造形が見えてくる。

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