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今年は規模を拡大。「ムーンアートナイト下北沢2023」に5作家が参加

昨年初開催され、約32万人を動員した下北沢のアートフェスティバル「ムーンアートナイト下北沢」。その第2回が開幕した。会期は10月1日まで。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

展示風景より、アマンダ・パーラーの《Intrude》

 夜間は気持ちのいい風が吹くようになった季節。「月」をテーマにしたアートフェスティバル「ムーンアートナイト下北沢2023」が東京・下北沢で始まった。会期は10月1日まで。

 同フェスティバルは昨年が初開催。大人から子供までの幅広い世代がまち歩きを楽しみながら、下北沢の魅力を発見すること、そして地域支援を目的とした地域密着型のアートフェスティバルであり、前回は約32万人という来場者を記録した。

 この「成功」を受けての2回目となる今年。小田急電鉄まちづくり事業本部で同イベント企画に携わる橋本崇は、「下北沢は商店街を含めて皆んなが新しいことに興味がある街」だとしながら、「NFTを含めた技術を取り入れることで街をひとつの実験の場にし、いい循環を生み出したい」と意気込みを見せる。

 前回から規模を拡大しての開催となる今回。フェスティバルのシンボル作品である「月」と「ウサギ」の屋外展示のほか、鬼頭健吾、ルーク・ジェラム、アマンダ・パーラー、Metaani、天野雛子の5名による作品が街中に設置される。

 複合施設「BONUS TRACK」に隣接する駐車場に現れたのは、ウサギを模した全長14メートルの巨大作品。オーストラリアを拠点とするアーティスト、アマンダ・パーラーによる《Intrude》は、本イベントのシンボルだ。パーラーは同作の背景について、「オーストラリアでは白人の入植者によって持ち込まれた3匹のウサギが繁殖し、いまではコントロールできない数になっている」と説明。人々を惹きつけるための愛らしさを持つ反面、人間が環境に及ぼした影響や、環境破壊、サステナビリティについて考えるきっかけを提示するものだ。

展示風景より、アマンダ・パーラー《Intrude》

 歴史的に月は世界中の芸術家にインスピレーションを与えてきた。この月を作品化したのが、イギリスのアーティストであるルーク・ジェラムの《Museum of the Moon》だ。下北線路街の空き地に浮かぶ同作は、NASAの月面写真をもとに制作された直径7メートルもの大作。50万分の1の縮尺で再現された月は1センチが実際の月の5kmを表す。月の科学的な側面を提示するだけでなく、展示される場所によってその意味や解釈が変わる作品だ。

展示風景より、ルーク・ジェラム《Museum of the Moon》

 普段は入ることができない「東北沢駅屋上」では、鬼頭健吾によるインスタレーション《Lines》が展開されている。蛍光に塗装された220本もの角材で構成された同作は、昨年、KAAT 神奈川芸術劇場で行われた個展「Lines 鬼頭健吾展」で発表された同名のインスタレーションをアレンジしたものだ。遠くに見える新宿のビル群と呼応するようなものとして、垂直要素を取り入れた。ぜひ内部に入り、様々な角度から作品を楽しんでほしい。

展示風景より、鬼頭健吾《Lines》


 なおこのフェスティバルでは、NFTによる取り組みも実施。NFTスタンプラリーでは、街の風景と3DアバターNFT「Metaani」がコラボレーションした10種類のオリジナルNFTが獲得できるほか、NFTチケット(トークンゲート)も採用されている。

 下北線路街を含む地域に根差した施設・店舗による特別イベントの実施や、限定メニューの提供など約50企画とあわあせ、下北沢で夜のアート鑑賞を楽しんでほしい。。

編集部

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