• HOME
  • MAGAZINE
  • NEWS
  • REPORT
  • 東洋美術の名品を一挙紹介。泉屋博古館東京で「古美術逍遥」が…
2022.9.10

東洋美術の名品を一挙紹介。泉屋博古館東京で「古美術逍遥」が開幕

今年3月にリニューアル・オープンした泉屋博古館東京。ここでリニューアル・オープン記念展のパート3「古美術逍遙 ― 東洋へのまなざし」が始まった。会期は10月23日まで。

展示風景より
前へ
次へ

 住友家のコレクションを収蔵する公益財団法人泉屋博古館が今年3月にリニューアルオープンさせた泉屋博古館東京。ここでリニューアル記念展のパート3として、「古美術逍遙 ― 東洋へのまなざし」が始まった。会期は10月23日まで。企画は竹嶋康平(泉屋博古館学芸員)。

 住友家が蒐集した美術品は、仏教美術から日本絵画・書跡、茶の湯道具・香道具、中国絵画・書跡、文房具にまでおよび、その内容は多岐にわたる。本展は、そんな住友家所蔵品のなかか、古くより人々のまなざしを集めてきた東洋美術の名品の数々を一挙に展覧するものだ。作品の時代幅は前漢時代(紀元前2世紀)から江戸時代(19世紀)。出品点数79件のうち、国宝2件と重要文化財10件が含まれる。

エントランスには《二条行幸図屏風》の複製が展示

 会場は「中国絵画」「仏教美術」「日本美術」「文房具と煎茶」の4章構成されている。順に見ていこう。

 作者の人格によって作品の価値が決まる、という伝統的な見方がある中国絵画。住友家では住友春翠・寛一親子がその蒐集に尽力した。父・春翠が好んで集めたのは、気品ある絵画。煎茶会など、用いる空間を念頭に置いて蒐集した作品ばかりだという。いっぽうの寛一は、伝統ではなく個性を極めた画家たちを好み蒐集した。

 第1章では、狂人として生涯振る舞ったという八大山人(はちだいさんじん)や、黄山(こうざん)を愛し繰り返して描いた石濤(せきとう)ら、明から清時代の名画12件が並ぶ。重要文化財となっている石濤の《廬山鑑瀑図》(清時代)は岩塊を含めたスケールの大きな風景を大きな画面にとどめた名作だ。画中の人物の目線でぜひ作品を鑑賞してほしい。

第1章展示風景より
展示風景より、八大山人《安晩帖》(清時代)
展示風景より、石濤《廬山鑑瀑図》(清時代)

 住友コレクションにおける仏教美術は、数こそ多くはないものの、仏教伝来の道筋をたどるような地域的な広がりを持っている。ここでは、精緻な線刻の美しさに目を奪われる国宝の《線刻仏諸尊鏡像》(平安時代)や、薄く好きとおったヴェールをまとう観音菩薩を描いた徐九方(そぐばん)の重要文化財《水月観音像》(1323)などに注目してほしい。

展示風景より、徐九方《水月観音像》(1323)
展示風景より、国宝《線刻仏諸尊鏡像》(平安時代)

 日本美術では、日本の書画と工芸が一部屋で一堂に紹介されている。なかでも中心となるのが、茶の湯や香道、能といった「数寄」を伝える道具の数々だ。ここで注目したいのは、《小井戸茶碗 銘 六地蔵》(朝鮮時代)。これは、小堀遠州が伏見の六地蔵で見出したという茶碗。住友家12代当主の友親があまりに高価で購入したため家中が騒動になり、お蔵入りとなったという曰を持つ。この茶碗は1919年に行われた住友友親追善茶会で春翠の手によって日の目を見るが、展示室ではこの茶会で実際に使われた《大講堂釜》(室町時代)なども並ぶ。

 加えて国宝の伝 閻次平作《秋野牧牛図》(南宋時代)や重要文化財《佐竹本三十六歌仙絵切「源信明」》(鎌倉時代)、伊藤若冲の《海棠目白図》(江戸時代)なども鑑賞できる、贅沢な空間だ。

展示風景より、中央が《小井戸茶碗 銘 六地蔵》(朝鮮時代)。奥には《二条城行幸図屏風》(江戸時代)が見える
展示風景より、《藤棚蒔絵十種香箱》(江戸時代)
展示風景より、《大講堂釜》(室町時代)
展示風景より、国宝の伝 閻次平《秋野牧牛図》(南宋時代)
展示風景より、伊藤若冲《海棠目白図》(江戸時代)

 第4章「文房具と煎茶」は、中国の工芸から、文人の文房(書斎)に備えられたもの=文房具の世界を紹介するものだ。

 中国の文人は、文房に清らかな美しさを求めていたといい、文房四宝(筆、硯、墨、紙)や瓶花、青銅器、煎茶などを文房に取り入れていった。展示室は、中国の文人や、それに憧れた日本の文人たち(住友春翠もそのひとりだった)の煎茶会のしつららえをイメージしたものとなっており、かつて文房でどのような芸術が鑑賞されていたのかが紹介されている。

第4章展示風景より
展示風景より、《粉彩百鹿図牛頭尊》(清時代)
展示風景より、《鍍金魁星像》(明時代)