女性アーティスト15名を紹介。「OKETA COLLECTION」展の後期で味わう「生きる力」

コレクターの桶⽥俊⼆・聖⼦夫妻が長年収集してきた現代美術コレクションを紹介する「OKETA COLLECTION」展の後期「YES YOU CAN −アートからみる生きる力−」が、東京・天王洲のWHAT MUSEUMで開幕した。その様子をレポートする。

展示風景より、手前はジェネシス・ベランジャー《Wild Intervention》《Make Me an Offer》(いずれも2021)

 今年4月から7月にかけて東京・天王洲のWHAT MUSEUMで開催された「OKETA COLLECTION」展の前期「Mariage −骨董から現代アート−」に続き、後期「YES YOU CAN −アートからみる生きる力−」が8月6日にスタートした。

 本展は、長年ファッションビジネスに携わってきたコレクターの桶⽥俊⼆・聖⼦夫妻が、約20年の年月をかけて収集してきた骨董や現代美術のコレクション「OKETA COLLECTION」を2つの異なるテーマで紹介するもの。

 後期では、桶田夫妻の現代美術のコレクションの原点でもある草間彌生をはじめ、近年注目が高まっている近藤亜樹やジャデ・ファドジュティミ、山下紘加ら若手作家を含む国内外の女性作家15名による作品32点と、特別展示として細江英公の作品4点が展示されている。

展示風景より

 展覧会のタイトル「YES YOU CAN」は、本展にも出品されたジュリア・チャンの作品タイトルから由来している。不安定な状況が続く現在の社会においてポジティブなエネルギーを作品とともに届け、自分を信じて前向きに生きていくというメッセージが込められている。

 桶⽥俊⼆は展覧会のオープニングに際し、次のように語っている。「コロナという厳しい時代に、いろんな環境の女性たちが作家活動をされて、力強い作品を描いていた。それに感動して、今回は女性アーティストだけで『YES YOU CAN』というテーマで発表した」。

展示風景より、左からロッカクアヤコ《Untitled》(2019)、川内理香子《Sun's trip》(2021)

 会場は、大きく分けると4つのエリアによって構成されている。まず紹介したいのは、桶田夫妻が現代美術を本格的に収集し始めたきっかけでもある草間彌生の作品を展示しているSPACE 5エリアだ。

 著作権関係上、プレス内覧会の際に同エリアの撮影ができなかったが(一般来場者も撮影禁止)、ここでは桶田夫妻がコレクションしてから初めて公開した草間の白い「無限の網」シリーズによる《Infinity Nets SPQOC》や200号の絵画大作《南瓜》(いずれも2015)に加え、1980年代の立体作品《POLLEN》(1984)と《花》(1985)、そして細江英公が1960年代にニューヨークでセンセーションを巻き起こしていた草間を撮影した写真作品などが並んでいる。

 隣のSPACE 4では、鮮やかな色彩や生命力にあふれた作品を制作している近藤亜樹の絵画作品群を展示。「家族」をテーマにした幸福で満ち溢れる《HOUSE》(2017)や、2021年に初の作品集『ここにあるしあわせ』の刊行にあわせて都内の4ヶ所で展覧会が開催された際に生まれた大型の作品《星、光る》(2021)などが、逞しく生きる力を見せている。

展示風景より、左から近藤亜樹《星、光る》(2021)《HOUSE》(2017)
展示風景より、左から近藤亜樹《ネバーランド》(2021)《よろこびの花》(2019)
展示風景より、近藤亜樹《不死鳥》(2020) Copyright the artist. Courtesy of ShugoArts

 会場中央のHALLエリアは、主にジャデ・ファドジュティミと山下紘加の作品で構成。昨年、史上最年少となる27歳でテートのコレクションに作品が収蔵されたファドジュティミは、今年のヴェネチア・ビエンナーレにも参加するなど、大きな注目を集めているアーティスト。独特な色彩感覚で生み出された作品では、個人的な記憶や体験を抽象的または具象的な要素で反映している。

展示風景より、左からジャデ・ファドジュティミ《I can't erase my dreams》《Gales or Breath?》(いずれも2021)
展示風景より、ジャデ・ファドジュティミ《A Bellyful》(2019) © Jadé Fadojutimi / Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery

 いっぽうの山下はニューヨークとニュージャージーで絵画を学び、現在は岡山を拠点に活動しているアーティスト。昨年は東京オペラシティ アートギャラリーのプロジェクトスペース「project N 84」で個展を開催したことも記憶に新しい。西洋画に日本画の特徴的な画面構成や色彩表現を重ねることで、自然と人間の関係性や日本的な儚さの表現を追求している。

展示風景より、左は山下紘加《Red Mountain》(2020)
展示風景より、右は山下紘加《菖蒲の夢》(2019)

 最後のSPACE 3エリアでは、今津景、ジュリア・チャン、ジェネシス・ベランジャー、アイ・チョー・クリスティン、キャサリン・バーンハート、クレア・タブレ、川内理香子、鍵岡リグレアンヌ、清川あさみ、タラ・マダニ、ロッカクアヤコといった11人の女性アーティストの作品が展示。様々な視点で描かれた生命力にあれる作品群が集結し、桶田コレクションのエネルギーが体感できるような空間がつくり出されている。

展示風景より、左からキャサリン・バーンハート《E.T Matcha ice cream + Sacai》(2018)、ジュリア・チャン《Pump And Bump》(2019)、ロッカクアヤコ《Untitled》(2019)
展示風景より、左から清川あさみ《imma(identity)》(2020)、タラ・マダニ《Shit Mom(Construction)》(2019)

 多様な表現で力強い作品を生み出している女性アーティストにあらためてフォーカスした本展。桶田夫妻の審美眼のもと、その前向きに生きる力をぜひ会場で目撃してほしい。

桶⽥俊⼆・聖⼦夫妻

編集部

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